Dr.加瀬セラピー軟部損傷アプローチ

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Dr.加瀬セラピー軟部損傷アプローチ

加瀬療法(DKT:Dr.Kase Therapy)の集大成。 多種多様な技法がこの一冊に!

著者加瀬 建造D.C. 判型B5判/264頁 オールカラー 発行年2010年
基礎編は、著者の40年に及ぶ研究と臨床経験から得られた知識とキネシオテーピング、オステアローザ、クライオセラピーなどの各技法を解説する。

臨床編は、頭蓋骨・頚椎など全身の各部位ごとの代表的な症例を、解説、診断ポイント、テスト、治療法の順にオールカラーのイラストと写真により詳しく解説する。

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基礎編
自然療法を私はこう考える
皮膚の驚くべき構造と働き
心と皮膚の深い関係
筋肉・筋膜の構造と役割
流体筋膜論
生命を守るが危険も伴う体の冷却
カイロプラクティックの正しい見方と留意点
外から見えない体の奥への刺激
骨を叩く療法「オステアローザ」
キネシオテーピング
クライオセラピー
筋・筋膜スラッキング療法
マッスル・ユニット・トレーニング(MUT)
第1章:スクリーニング・テスト
リンダー・テスト1
頚椎伸展テスト
血管膨隆テスト
ライト・テスト
リンダー・テスト2
腹圧テスト
パトリック・テスト
SLRテスト
第2章:頭蓋骨・頚椎
頭痛
めまい
顎関節異常
不眠症
近視・遠視・眼精疲労
花粉症
頚肩腕症候群
高血圧
統合失調症
脳性マヒ
第3章:胸椎
側弯症
背部痛
アレルギー・気管支喘息
動悸・息切れ
肋間神経痛・帯状疱疹・ヘルペス
第4章:腰椎・仙骨・骨盤
筋・筋膜性腰痛
椎間板ヘルニア
脊柱管狭窄症
脊椎分離症
仙腸関節症
股関節症
膠原病(リンパの改善)
第5章:腹部
胃下垂
季肋部不快感
胃部不快感
便秘
月経困難症
泌尿器障害
第6章:上肢帯
肩こり
六十肩・七十肩
野球肩
テニスエルボー
手根管症候群
腱鞘炎
リウマチ
第7章:下肢帯
坐骨神経痛
変形性膝関節症
鵞足炎
腸脛靭帯炎
シンスプリント
前十字靭帯損傷
足関節捻挫
足底筋膜炎
外反母趾

私の自然療法一筋の人生の出発点が、アメリカの大学で学んだカイロプラクティックにあるのはいうまでもない。あれから40年近くたって、私なりに研究と臨床経験を重ね、キネシオテーピング法をはじめ、いくつかの技法を考え出した。この本はそれらを含め、今の時点での加瀬療法(DKT:Dr.Kase Therapy)の集大成ともいえる。

この間、私の中ではカイロの位置づけも変化してきている。カイロは骨、特に背骨の矯正を重視するが、私は、骨はもちろん大事だけれども、それを支える筋肉、筋膜、皮膚といった軟部組織の存在が生体にとって従来考えられていた以上に重要で、大きな役割を果たしていることに着目した。事実、この視点から軟部組織へのアプローチをすることによって、多くの患者を救うことができたのである。したがって、最近のセミナーでは軟部組織への手技に力を入れている。

キネシオテーピング法が30年前に開発されて、世界で広範囲のスポーツ・医療の世界で利用されてきたのは、あらゆる神経伝達から免疫までの機能を有する表皮からの持続的なアプローチの結果といえる。その表皮の幹細胞がES細胞と呼ばれ、再生医療の中心となっているものの一つである。

最先端医療の一つとして、再生医療が注目を集めているが、再生医療とは、自然には再生できない組織や臓器を再生させて、機能を回復させることをめざす医療である。

キネシオテーピングにより手術後の傷口を早く再生させたり、火傷・外傷から起きた皮膚の傷を予想以上に修復することができるのも表皮の最下層部の基底細胞が幹細胞であり、その幹細胞をキネシオテープが表面からわずかなスペースをつくりあげることにより、表皮の幹細胞が分裂して新しい細胞を生み出している結果なのである。

この幹細胞は、274種類の細胞として身体全体に分布している。

表皮は、骨・筋肉以外のほとんどの組織の細胞と胎生学的に関連性を持っている。DKTの基本は空(適切なスペース)、動(一定区域内の必要な動き)、そして、冷(細胞内のタンパク質を傷める熱の発生を予防する温度)であり、すべてこれらの組織の幹細胞が適切に再生されていくための自然療法と考えている。

その意味から、先端医療は臓器移植や人工多能性幹細胞(IPS細胞)、また「人工皮膚」「細胞シート」などの組織工学的医療と考えられているが、自然医療によって身体の中の自然治癒力が実はこれらの細胞を効率的に利用した結果、意外な奇跡的結果を起こしていると考えられる可能性が十分にある。

DKTでは、身体の中に備わっている自然治癒力を最大限に利用できるように、適切な刺激を表皮から与えていくことに最大限の注意を払っている。

さらに、細胞の世界を学ぶことによって、命と健康を守る生体のしくみの不思議さに驚嘆している。ミクロの世界に分け入って、私が長年やってきたことの意味と裏付けも少しずつわかってきた。

そして「空・動・冷」が、私の提唱している「流体筋膜理論」と重なることに感動している。最近の細胞生物学での細胞膜における輸送の基本が、「空・動・冷」の考えと一致するからである。

シェーンハイマーは生命の特異的なありように「動的平衡」という名前を付けたが、福岡伸一は、「生命とは動的な平衡状態にあるシステムである」と表現している。

私の「空・動・冷」は、生命の基本形である細胞が極小宇宙で生命活動をする場合の主役は、タンパク質であると捉える。そのタンパク質の誕生から死、それらのタンパク質の異常が引き起こす病気、すべてタンパク質が絡み、重要な役割を果たしている。

また、体の動きの中心である筋肉の動き、血液、リンパ液などの組織液、体液の流れも、動くための空間があってこそである。動くことによって発生する熱が起こす炎症、そして組織の破壊、これは死につながる。こうして見ると、「空・動・冷」の重要性がおわかりいただけると思う。

ヒポクラテスは「体に悪いことをするのは医療ではない」といったが、この「空・動・冷」という基本に立って、いかに悪くない治療法を考えるか、よい医療へ歩を進めるか、この本がそのために少しでもお役に立つことを願うものである。

加瀬 建造