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代替療法の世界 第6回 穿った見方

先日、東京出張の折、喉の痛みが半端なく、土曜日ということもあり普段であれば我慢するのだが、どうにも我慢しきれずに病院に行った。医師は一瞥するなり「風邪か口内炎でしょう」とのこと。「何か細菌などの感染症のようなものには罹っていませんか」という問いにも、「ありません」という応え。一般総合感冒薬、痛み止め、胃薬、トローチをもらい内服するも、一向に症状は軽減しない。

ネットでチェック、瞬時にAIが

ネットで症状を調べると、溶連菌感染症が濃厚であった。であるならば、抗生物質が処方されていない薬では効果は薄い。怖い時代になった。ネット社会で情報がすぐに手に入るから、気になる症状をピックアップして検索をかければ、可能性のある病名が羅列される。近い将来AIの台頭により、内科医の仕事も変化するだろう。少なくとも可能性のある病名がいくつか出てこないと医師としての地位が脅かされる事態になる。これは対岸の火事ではない。代替療法も同じくAIにジャッジされるということだ。

地元で受診

数日後、収まらない喉の痛みのため地元の診療所に行く。医師に今までのストーリーを話すと、「喉の炎症はそれほど強くはないが一応溶連菌の検査をしましょう」と言った。結果は陰性だった。がしかし、症状を聞く限り溶連菌感染症も疑われるとのこと。抗生物質を処方された。ほどなくして症状も収まり、溶連菌を含むなんらかの細菌による感染症だったことがわかった。

アートの重要性、「さじ加減」の妙

総合診療医の山中克郎医師によれば、患者の話を良く聞くことで80%の病気の診断はつくという。これはAIでも可能なことであろう。しかしながら人間が行う医療ではアートの部分が大事になる。先の溶連菌の検査が陰性でも、喉の痛みが減っていないことに対して抗生物質を処方した。こうした行為こそが医療の芸術なのだ。これぞ「さじ加減」である。

「穿ち」、本来の意味は

江戸時代の文化人、井原西鶴の作品に、「穿ち」を用いるものがある。とある女性の集団に犯人が隠れていて、その犯人を探し出すために全員に絹の服を着せ、数時間後にキツイ尋問をすると告げる。身に覚えのない者はリラックスするので服には皺が寄る。一方犯人は緊張が解けないので、皺ができにくい。皺が無い者が犯人である、という描写がある(絹は他の生地と違って皺ができやすい性質である)。「穿ち」とは日本人の半数近くが誤用している言葉である。本来の意味は穴を開ける。転じて、物事を見通すとか、的確に物事をとらえるとか、本質を突くなどの良い意味で使われるのである。

穿った見方こそが

医療の芸術部分に目を向けた場合、エビデンスも大事であるが、穿った見方をしなければならないのである。前述の医師はそれにより抗生物質を処方した。それを担保するものは観察であろう。観察者に徹することで「穿ち」を養うのである。こうした方法は代替療法を行う治療家も大いに参考になる。

AIとの競合には人間ならではのアートで

患者は自分の症状をネットで検索する。AIは瞬時に膨大なデータベースから必要な答えを出す。ハイテクのAIに対抗するにはローテクの「穿ち」が必要になる。代替療法家に限らず医療に携わる者にとっては、常に重要な要素になろう。将来は同業者との競合に加え、AIとの競合という状態になっていくだろうから、ますます重要性は高まるだろう。そして穿った見方を身につけなくてはならない。それが「さじ加減」を生み、代替療法のアートを高めることになる。

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