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榊原直樹D.C. 連載「スポーツ・カイロ」第1回
肩のスポーツ障害

榊原直樹D.C. 連載「スポーツ・カイロ」第1回肩のスポーツ障害

今回からの連載は、カイロジャーナル本紙(休紙)2007年7月19日59号からWeb版にアーカイブしたものです。今後機会を追って連載を続けていきます。ご期待ください。

インピンジメント症候群 Ⅰ

運動選手が訴える症状には様々なものがありますが、その中でも特に多いのが肩の障害(外傷)です。 肩関節複合体というのは、四つの関節の総称です。肩甲上腕関節、肩鎖関節、胸鎖関節、肩甲胸郭関節があり、最後の肩甲胸郭関節以外は滑膜性関節と呼ばれ、人間の体の中でもっとも多い関節です。それぞれの関節にはそれぞれ特徴的な障害がありますが、今回は肩甲上腕関節の障害、その中でも特に「インピンジメント症候群」にスポットを当ててみたいと思います。

 まずインビンジメントという言葉についてですが、 これ は英語では“ Impingement”と書きます。 日本語では「衝突』という意味であり 、 この衝突は烏口肩峰アーチ (図l参照)で発生すると考えられています。

 烏口肩峰アーチにはいくつかの重要な構造があります。棘上筋腱(筋腱部)、関節包、上腕二頭筋腱(長頭)、肩峰下包などです。 つまりインピンジメント症候群では、肩の外転を反復することで、 これらの構造が大結節と関 節禽(関節唇)の間で何度も挟まれ、 炎症に進行するわけです。

 特に棘上筋腱炎は、インピンジメント症候群の患者に多い疾患です。野球やテニス、水泳など上肢のオーバーヘッドモーション(肩の挙上運動)を反復する運動選手に よく見られます。 棘上筋腱には炎症とともに、 変性が見られることがあります。 棘上筋腱の変性が進むと、 最終 的には腱の断裂が起こります。 しかしこれは若い運動選 手にはまれな症状です。

 原因は機能的原因と構造的原因に分類できます。機能的原因にはローテ ーターカフの筋バランスの問題や炎症、肩峰下包の炎症による腫脹や変性に伴う肥厚、肩甲胸郭関節の運動障害(フォ ースカップルの不均衡)など があります。 これら機能的原因は肩甲上腕関節の不安定 性が一 次的要因となっていることもあります。

図1 烏口肩峰アーチ

 構造的原因には肩峰の形状(図2参照)や骨棘の形成、烏口肩峰靱帯と円錐靱帯の変性(肥厚)、肩峰骨端癒合不全(Os acromiale) 、 関節唇の断裂などがあります。

図2 肩峰形態のバターン

タイプ 1タイプ 2タイプ 3
平坦形(FLAT)カーブ型(CURVE)くちばし形(HOOK)
インピンジメントは発生しにくいインピンジメントの発生率が高くなるインピンジメントの発生率はもっとも高い
機能的原因構造的原因
・ローテーターカフの不均衡
・ローテーターカフのの炎症や変性
・肩峰下包の炎症や変性
・肩甲胸郭関節の運動障害
・肩峰の形成異常
・骨棘の形成
・烏口肩峰靭帯、円錐靭帯の変性(肥厚)
・肩峰骨端痣合不全

 それでは関節内では、どのような障害が発生している のか説明していきたいと思います。 肩甲上腕関節の関節 内運動には「回転」と「滑り」の二種類があります(図3参照)。肩の挙上(屈曲、外転)において、 上腕骨頭には上方への回転と下方への滑りが発生していますが、 インピンジメント症候群では上腕骨頭の過剰な上方回転、もしくは下方滑りの制限が起きています(またはそれら両方)。つまりインピンジメント症候群の治療には、このような関 節内で起こる運動障害の改善が不可欠になります。

図3 肩甲上腕関節の関節内運動

 次に問診、検査で注意する点を説明してみます。 問診では症状(痛み)が現われている箇所、 痛みの質、関連痛の有無、症状が悪化する肩のポジションなどが特に重要となります。 患者が訴えている痛みの領域を明確にすることで、 その原因となっている構造を推測することが可能になります。さらに触診により、もっとも強 い圧痛点を見つけることで、痛みの原因となっている構造を特定していきます。

 肩関節(肩甲上腕関節)の可動域検査も重要です。インピンジメントが起こっている場合、肩の自動的外転60°から120゜の間で疼痛があり、60゜以下または120゜以上で痛みの軽減が認められます。肩外転位60゜から120°の間において、烏口肩峰アーチがもっとも狭窄されます。つまりインピンジメント症候群では、この角度において強い痛みが感じられる傾向があります(ペインフルアーク陽性、 図4参照)。

図4 ペインフルアーク

また烏口肩峰アーチの狭窄が発生しやすい肩のポジションには、肩90゜屈曲位における肩の内旋があります。このポジションはちょうどHawkin’sテスト(図5参照)の最終ポジションになります。Hawkin’sテストはインピンジメント症候群の代表的な検査法の一つです。

図5 Hawkin’s テスト

講師情報

榊原直樹, DC, DACBSP®, ICSSD, CSCS

・東北大学卒業(動物遺伝子学)
・Cleveland Chiropractic College卒業。
・カイロプラクティック・ドクター免許取得(#DC25271)
・公認スポーツ障害専門カイロプラクター(CCSP)
・公認ストレングス&コンディショニングスペシャリスト(CSCS)
・トリノオリンピック・メディカルチームメンバー
・スポーツ・カイロプラクティック学位(DACBSP)
・岐阜大学大学院医学系研究科非常勤講師
スポーツ医学&カイロプラクティック研究所
blog スポーツドクターSのざっくばらん

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