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徒手療法の世界に身を置いて <第10回>
ある日の勉強会から

徒手療法の世界に身を置いて ある日の勉強会から

徒手療法の世界に身を置いて <第9回>「徒手療法家と探偵」から はこちら

 今回は先日の勉強会の中でも紹介させていただいた、施術の間違いを減らすポイントについてお話しさせていただこうと思う。

間違いは何よりも不十分な検査が原因で起こることが多い(MacNab)。

 これは「カイロプラクティック マネジメント」の第5章、検査の項目の一番初めの文章である。

 どんな検査でも1つの検査所見では不完全である。なぜなら検査には感度と特異度があり、確実に「この検査の陽性はこれだ」と確定できないからである。あくまでもそれは「示唆」にとどまる。言い方を変えれば、それは偽陽性を含むものであり、もっと極端に言えば、陽性所見とは「高い確率でそうであろうという偽陽性」なのである。

各検査の考察は整合性が取れている必要がある。

 先月30日からオンラインでの『徒手療法家のための基礎講座』の第5期、「整形外科テストを考える」をスタートさせていただいた。その中で受講されている先生方に「ケンプテストとSLRテストを行って、1つが陽性、もう1つが陰性という経験が臨床上ありませんか?」と尋ねたら、何人かの先生方から「あります」と手が挙がった。この2つのテストは発症メカニズムが異なるので、こういったケースが十分にあり得る。

  そのときは触れずにいたが、この2つのテストが陽性になるケースも臨床上は当然存在する。どのようなケースかというと、本当のヘルニアである。ヘルニアが起こり、髄核の突出が起こると椎間板の膨隆が起こる。膨隆による圧迫ストレスはケンプテスト陽性になりやすい。さらに圧迫された神経根には、少なからず牽引ストレスが加わる。例えばタオルの両端を持って真ん中を押さえると、タオルの両端が押さえている場所に向かって引っ張られるのと同じ理屈である。これによりSLRテストは陽性となる。この理屈なら圧迫と牽引という2つの異なるメカニズムでも整合性の取れる解釈となる。

観的評価/考察の間違いは術者の頭の中で起こる。

多くの患者さんを診ていると、どうして良くなったのかわからない患者さんがいる。もちろん、施術者として良くなって欲しいと施術しているにもかかわらずだ。

 しかし、どうして良くなったのかわからない患者さんばかりでは、当たるも八卦、当たらぬも八卦となり、運任せの施術になってしまう。徒手療法は、患者さんの機能障害を施術することはもちろんだが、その治療哲学に大なり小なり「自然治癒力」を最大限引き出すという考えがある。しかしながら、どうして良くなったのかわからない施術では、もろに「自然治癒力」任せになってしまっている。

 このような場合、多くは検査の考察に問題がある。不確かな知識や間違った知識、施術者自身の思い込み。過去に同じようなケースで治ったからという経験。

 「○○はこれで治す」といったセミナーもよく見かけるが、実際にその施術方法で治っている患者さんがたくさんいるから、そのセミナーが成り立つのだろう。つまり施術方法としては有効な技術だと思う。しかし、それを勉強した施術者がその技術を使っても、あまり効果が出ない場合がある。この技術で治るという思い込み。How to頭では限界があることに早く気づかなければ自ずと限界が見えてくる。こういった問題は臨床の現場ではなく、その患者さんを診る前から施術者の頭の中で起こっている。

 少なくとも思い込みでする施術は避けたいものだ。


辻本 善光
(つじもと・よしみつ)

現在、和歌山市で開業。
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。

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