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徒手療法の世界に身を置いて <第8回>
講師冥利に尽きる

徒手療法の世界に身を置いて 講師冥利に尽きる

徒手療法の世界に身を置いて <第7回>「短所をなくせば長所は伸びる -北口榛花・オリンピック代表 女子陸上やり投げ選手の日本記録更新から-」から はこちら

大事なものは人それぞれ

 人それぞれ大事にしているものがあると思います。家族や仲間。地位や名誉。仕事や遊び、などなど。また、われわれの生業、施術活動においても、施術技術を一番と考える先生、患者さんへの説明こそ大事とわかりやすさを心がける先生。はたまた施術所の雰囲気など、ホントに人それぞれだと思います。

 でも、当人がいくら大事だと思っていても、他人から見たら「なんや、そんなもん」と思われるかもしれませんし、「おおぉー」と感心されかもしれません。それは個人を取り巻く環境や、その人の考え方によって異なりますが、小さいから悪いとか、大きいから良いというものでもないでしょう。
また、同じ人間でも「○○の中で大事にしていること」というように、立場が変われば変化していくのも当然かもしれません。

受講生からの質問

 科学新聞社の斎藤さんから声をかけていただき、それも「お前の好きな基礎と検査の話をしろ」と言われ、昨年7月からWebセミナーの講師をやらせてもらっています。もう1年近くが経ち、このコラムが掲載される頃には、第4期も終了していると思いますが、第1期からずっと受講してくださっている先生もいますし、第4期の「アナトミー・トレインを理解すると」から参加してくださった先生もいます。また、なんと海外から参加してくださった先生(DC)もいらっしゃいました。それだけでもメチャ嬉しいのに、最近になって質問の内容が、正に講師冥利に尽きるものが増えてきて、これがまた、何より嬉しい。
 もちろん質問というのは自分が理解しづらいからするわけですが、経験上、自身の施術活動に活かすためのきっかけとする先生も多数いらっしゃいました。第4期に入って「いい質問やなぁー」と思える質問がいくつかあったのですが、その中から2つだけ紹介させていただきます。

 1つ目は前述の海外から参加してくださった先生からの、「肩甲挙筋と菱形筋では同じような姿勢となるが、その優先順位はありますか?」という質問でした。「1つひとつの問題点をつぶしていくことが大切になってきますので、どちらの筋の短縮も座位姿勢の延長が原因となるため、腰部の前弯をつくることや胸部の過剰な後弯をなくし、その結果、残った問題点に対して施術するポイントの優先順位をつけていきます」と答えさせていただきました。これは第1期の視診のところでお話しさせていただいたもので、私自身が施術時においても、セミナー等の講義時にも、常に大事にしていることの1つでした。

 2つ目は第1期から受講してくださっている先生からの、「小胸筋のところで過外転症候群とありますが、過外転ってどんな運動ですか?」という質問でした。参加者の中には「えっ、そんなこと」と思った先生もいたかもしれませんし、ただただ本に載っている写真を見て、これが過外転と覚え込んだ先生もいたかもしれません。しかし実際にそう覚えていた先生方に、「過外転をやってみてください」と言うと、中にはできる方がいるかもしれませんが、「説明してください」と言ったら、説明できる先生は少ないと思います。

 どんな力が働いてそこに至っているのか? 細かな組織の変化ですが、それを説明できないと施術もできなければ、患者さんに納得してもらえません。過外転という運動方向の表現ですが、その表現の中には関節運動や軟部組織の緊張が存在します。そこを理解してもらうことが重要と思い、そのために2期、3期、4期と続けさせていただいています。これも私の大事にしていることの1つです。

簡単なものの中にこそ大切なものが

 どちらの質問も受講していた先生方からは、「えっ」とか「おおぉー」とか別れるかもしれませんが、どちらの質問も講師を務める私からすると、「よくぞ聞いてくれました!」と思わず声を上げたくなる質問でした。特に2つ目の質問のときには、嬉しくて笑みがこぼれていたかもしれません。さすがに立場上、そうはできなかったにしても、実際には心の中で「よっしゃぁー」とガッツポーズをしていたくらいです。

 コロナ禍に脅かされる前までは、方々で対面セミナーをやらせてもらってきて、いろいろな質問を受けてきましたが、基礎と呼ばれる単純で素朴な質問ほど、的を射ていてとても大事な気がします。検査やメカニズムという他の先生方から見れば、「そんなもん」と思われがちなものこそ、日々の臨床においてはとても大切になってくるのではないでしょうか?

 最後に、第5期も「そんなもん」と思われがちな「小さな気づき」を大切に頑張りたいと思います。


辻本 善光
(つじもと・よしみつ)

現在、和歌山市で開業。
現インターナショナル・カイロプラクティック・カレッジ(ICC、東大阪市)に、22年間勤め、その間、教務部長、臨床研究室長を務め、解剖学、一般検査、生体力学、四肢、リハビリテーション医学、クリニカル・カンファレンスなど、主に基礎系の教科を担当。
日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)学術大会でワークショップの講師を務め、日本カイロプラクティック登録機構(JCR)設立当初には試験作成委員をつとめる。
現在は、ICCブリッジおよびコンバージョン・コースの講師をつとめ、また個人としてはカイロプラクティックの基礎教育普及のため、基礎検査のワークショップを各地で開催するなど、基礎検査のスペシャリストとして定評がある。

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