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代替療法の世界 第28回
「商売敵」

代替療法の世界 第28回「商売敵」

患者の選択肢は様々

 徒手療法の世界では、患者からの訴えは様々である。中でも筋骨格系の痛みに関連する愁訴が多いように感じる。痛みには2種類あって、1つは不快を感じさせる痛みがある。不快感を伴う痛みは、情動に関与する痛みなので厄介な代物である。

 これは痛みが無髄神経であるC繊維を経由して、情動部分を司る扁桃体を通るために生じるものだ。「痛みを感じる」ということは人が生きていくためには必要不可欠なものである。正常な状態であれば「正しく痛みを感じる」ことができるのだが、異常な状態になれば、正しく痛みを感じられなくなって、痛みに振り回されることになる。そうなったとき、患者の辿る道はいくつかある。

  1. 病院に行く。治療する。治る。
  2. 病院に行く。治療する。治らない。

 大別すると、この2つのパターンである。最初から代替療法を選択する人もいるだろうが、多くは①のパターンであろう。問題は②のパターンのとき、治療を継続するか、病院を止めて代替療法の門を叩くか、どちらかの選択をしている。代替療法に流れてくる患者には理由がある。端的に言えば、病院での処置に納得していないのである。

整形外科の治療対象は?

 今では患者も情報をよく知っているので、整形外科が第1選択肢として挙げられるだろう。(公社)日本整形外科学会のホームページには、「整形外科は運動器の疾患を扱う診療科です。身体の芯になる骨・関節などの骨格系とそれを取り囲む筋肉やそれらを支配する神経系からなる「運動器」の機能的改善を重要視して治療する外科で、背骨と骨盤というからだの土台骨と、四肢を主な治療対象にしています」とある。

 さらに「運動器とは、身体運動に関わる骨、筋肉、関節、神経などの総称です。運動器はそれぞれが連携して働いており、どのひとつが悪くても身体はうまく動きません。また、複数の運動器が同時に障害を受けることもあります」と続く。

整形外科の商売敵!?

 翻って代替療法においては、この「運動器」なるものにどのようにアプローチをしているのであろうか。先のホームページでは、整形外科では運動器の機能改善を重要視しているとある。代替療法も方法論にそれぞれ違いはあるが、大まかなところでは機能障害にアプローチをすることに、より治療成績を上げてきた。であるから、商売敵であると認めているのであろう。

 その証拠にカイロプラクティックと整形外科の違いということで、カイロプラクティックの説明をしている。「カイロプラクティックは19世紀の終わりにアメリカで考案された脊椎矯正手技療法です。内臓をはじめとして身体のさまざまな不調が脊椎骨の配列の乱れによる神経圧迫に起因するとの考えから、この乱れを矯正して身体機能を回復させようとするものです。一部の国では資格試験もありますが、日本ではカイロプラクティックの公的な資格はなく、国に認められた学校もありません。つまり、誰もがカイロプラクターを名乗ることが可能です。法に基づいた資格である柔道整復師やあん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師(あはき師)と異なり、整体などと同様に法的な根拠のない医業類似行為に分類されます。米国の公的な資格を取得した施術者もあれば、数日の講習を受けて開業する施術者もあり、そのレベルは様々で、健康被害を生じた報告もあります」と代替療法の1つである、カイロプラクティックの日本国内での法的な整備のことや、玉石混交であるという事実を客観的に述べている。

整形外科テストの価値 

 さて話を戻すと、運動器の機能障害にアプローチするという点では、同業他社である整形外科と代替療法は同じであるが、整形外科と代替療法のアプローチの違いはどういうことが考えられるのであろうか? 整形外科のアプローチは「運動器はそれぞれが連携して働いており、どのひとつが悪くても身体はうまく動きません」と謳っているので、機能的要因に踏み込んでいるかと思ったが、違った。

 代替療法に訪れる多くの患者が口を揃えて言うのは、整形外科ではレントゲンやMRIを撮っただけで何もしてくれなかった。薬をくれたのだが、あまり効果を感じない等々。これは多くの代替療法家が患者から聞くことがあると思う。整形外科では運動器の疾患を扱う機能的改善を重要視しながらも、X-Ray、MRIなど画像検査が主流を占める。

 これでは機能の検査はできない。画像検査が教えてくれるのは器質的な状態であり、機能障害を示してはくれないのだ。整形外科的テストなどもほとんどされてないようである。整形外科テストは使いようによっては、機能障害部位を特定するには有用な検査であるのだが、画像診断が主流の今では整形外科テストの価値は相当低いようである。であるから、患者の主訴とマッチした検査ができていないので、器質的疾患を持つ患者は治療に満足するし、機能的な問題に起因する症状を持つ患者は満足しないのだろう。

代替療法における整形外科テストの役割とは?

 一方、代替療法においては画像診断に頼ることはできない。となれば、整形外科テストに代表される損傷度合いを推定できる、機能的な整形外科テストを駆使するしかあるまい。ただ、教科書通りに使っても意味がない。

 辻本善光氏が7月下旬から、整形外科テストを主軸に置いた「徒手療法家のための基礎講座」の第5期をスタートさせる。辻本氏の言葉を借りると「従来、整形外科テストは施術者が受療者の損傷組織の特定,損傷の程度の把握、あるいは損傷メカニズムの解明などのために使用されるテストであるが、重要なのは徒手療法に携わる施術者にとって、診断を下すことではなく、どの組織にどのようなストレスが加わったときに受療者の症状が発症するかということを判断する材料として、整形外科テストを用いることが有用である」と言う。

 この診断を下すことが目的でないということが重要なポイントになってくる。整形外科テストは患部にストレスをかけ、症状の誘発を行うから、テストが陽性になれば、当然ながら整形外科の領域ということも考えられる。しかしながら、なんでもかんでも整形外科に紹介するというのも代替療法にとってはマイナスだ。

 やってはいけない状態とやっても良い状態を、しっかり鑑別しなければならないのである。そのためには「徒手療法家のための整形外科テスト」を学べば査定ができるようになるだろう。そういう意味では整形外科で使うテストと代替療法で使うテストでは、同じ検査法を用いながらも見ている物のポイントが違うということになる。つまり、整形外科と代替療法は商売敵というより、しっかり住み分けができているのである。

辻本Web第5期の目的と中身は?

 最後に、辻本氏の今期の「徒手療法家のための整形外科テスト」の目的と、講義内容の一部を紹介する。可動域テストの延長にある整形外科テストにおいて、その動作を生体力学的に説明し、必要のない余分なテストを省くことを目的としている。

 また、これらのテストは他動運動と自動運動の上に成り立っている。それぞれの運動時にどのような組織が関与しているか、が理解できれば、多くの情報を少ない刺激で得ることができる。整形外科テストは少なからず患者の体に負担をかける。だから患者の体に不必要な刺激を極力少なくして、1つの検査からたくさんの情報を得られるようする。

 例えば体幹前屈検査や支持前屈テストにおいて、脊柱のバイオメカニクスを加味すると、単純な前屈運動においては下記の1.から5.の順番で動きが起こる。この順番が順番通りに行わなければ、その動きの道中に問題があるのだ。それがわかれば何をすれば良いのか、という答えを出すのは簡単である。

 これらは1例であるが、その他の整形外科テストもバイオメカニクス的な解析をして考察していく予定である。前屈運動1つとっても、バイオメカニクスの観点からみると、多くの動きの連携である。これぞ「運動器の連携は、どれか1つでも悪ければ身体が上手く働かない」という整形外科学会の主張を裏付けるものである。代替療法に対して、ことさら目くじらを立てるほどもなかろうに。

前屈運動

1.腹筋群、股関節屈筋群の収縮による体幹の前屈開始
2.脊柱起立筋群の伸張
3.殿筋群の伸張
4.ハムストリングの伸張
5.下腿三頭筋の伸張


山﨑 徹
(やまさき・とおる)

はやま接骨院(高知県高岡郡)院長
・看護師
・柔道整復師
全日本オステオパシー協会(AJOA)京都支部長
シオカワスクールオブ・カイロプラクティック ガンステッド学部卒NAET公認施術者

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