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代替療法の世界 第25回
 「一知半解」-丸山ゼミに参加して ① -

代替療法の世界 第25回 「一知半解」-丸山ゼミに参加して ① -

神経学事始(しんけいがくことはじめ)

 カイロプラクティック神経学が日本に紹介されて20年以上が経った。増田DCが神経学のセミナーを始めるとき、それまで彼のセミナー(増田ゼミ)に参加していたメンバーに、「カイロプラクティック神経学専門医(DACNB)の資格を取得することにしたので、みんな付き合ってくれ、一緒に勉強しよう!」と言って、「神経局在診断」(文光堂刊)をテキストにセミナーが進んでいった。

 当時を振り返ると、セミナー時に神経局在診断を開くこともなく、増田DCが用意した10数ページに及ぶ神経学の講義資料をもとにセミナーが行われていたように思う。神経局在診断がテキストにされていながらも、それを辞書替わりにも使えないくらい神経学の知識が不足していた。

 講義資料を見ても同じことで、説明を受けてもチンプンカンプンだった。カイロプラクティックの原則論として、原因、結果の因果律を神経学にどうやって落とし込めているのか知りたいのに、その方法論は教えてくれなかった。これは今、丸山氏の神経学を学んでいる人たちにも、同じフラストレーションを抱えているかもしれないと予想できる。当時の私がそうであったように、重要なことは「神経学を使って、いったい何ができるのか?」という問いであるだろう。

何ができるの? 神経学!!

 「何ができるか?」ということは確かに重要なことだ。それを知りたいがために、毎週木曜日の朝8時から10時まで、時間を調整しセミナーを聴講している。丸山氏は受講生に対して本当のことを言う。「我々は何もできません」「できることは限られています」と。神経学の根幹は下記に示す3つの柱である。

  1. 酸素
  2. 栄養
  3. 刺激

 これらの3つの調和、バランスが適正であれば問題はないのであるが、これらが崩れることにより問題が起こると考える。そして問題はどこの部分なのかを適切に見極めて、その部分の処置をするのが神経学のアプローチになるのである。コンセプトは簡単な理屈である。

 細胞の生存条件であるTCAサイクルが健全に働くためには、酸素が必要であり、栄養が十分にないと活動電位が起こらないし継続できない。そして刺激(重力を含む)がないと神経発火(1a神経)におけるきっかけが起こらない。神経学は細胞の働きができる状態をつくるだけなのである。だから丸山氏は逆説的に前述の「我々には何もできません」と言うのだ。

神経学アプローチとは?

 さて、何もできない神経学であるのだが、科学に立脚したそれは、様々なアプローチ方法を提供してくれる。例えば、筋紡錘、腱紡錘を利用したアプローチ。1、振幅度(ゲイン)が大きいと感受性(センシビリティ)は低下する。2、振幅度が小さいと感受性は高くなる。

 1、の場合は中枢からのγ運動ニューロンの入力が低下しているため、錘内線維の非収縮部が緩むのである。これらの神経メカニズムを利用してⅠa神経を発火させないで、刺激を入れる方法がある。神経が疲弊し、神経発火を起こすことで神経壊死が予想できるときはⅠa神経を使って刺激を入れたくはない。ゲインを大きくさせると感受性は低下する。となれば、筋紡錘の発火も起こらない。錘内繊維をゆるめる方法がこの方法である。

 例えば筋の起始停止を近づける。あるいは起始停止を最大限に離しておいて、錘内繊維に対して時間をかけてストレッチする。拮抗筋に等尺性運動を与えて、目的とする筋のゲインを大きくするなど(もっとも中枢への投射の関係で注意が必要だが)・・・いろいろな方法が考えられる。

 起始停止を近づける方法は、カウンターストレイン、筋膜リリースの間接法になるだろうし、ストレッチだとNARTとかASTRなどが適応になるだろう。等尺性収縮だと筋エネルギーテクニックになる。既存のテクニックが効果を上げてきた理由が、神経学で裏打ちされているのが理解できるだろう。

半分の理解じゃ、もったいない 

 筋の適切なトーンを維持するには、筋紡錘両端部が適切に収縮し感度が上がらなければならない。つまり、振幅度を小さくしなければならないのである。γ運動ニューロンは脳幹網様体より入力を受ける。また、網様体脊髄路から介在ニューロンを介して、脊髄前角から筋紡錘にシナプスをする。

 介在ニューロンには、抑制性、興奮性、の両方がある。介在ニューロンの意味するところは、より細かな調整を行っているということである。重要な点は、大脳皮質からの投射は同側の橋網様体脊髄路に行っているということだ。

 γ運動ニューロンの状態は脳幹網様体の働きの影響を受ける。橋網様体脊髄路は伸筋の活動を高め屈筋を抑制する。延髄網様体脊髄路は伸筋の活動を抑制し屈筋を高める。だから脳幹網様体が正常な働きをするためには大脳皮質の働きが重要になってくる。

 γ運動ニューロンの問題により、急性腰痛いわゆるギックリ腰、急性首痛いわゆる寝違え、背部痛などが起こる。神経学の縦軸をみれば、大脳皮質の機能、脳幹網様体の機能、を考慮しないといけないことがわかる。

 先に述べた筋を収縮させない方法を横軸の方法とすると、縦軸に対してのアプローチは脳幹の検査と脳幹の神経核に対しての刺激、または大脳への刺激になる。横軸だけの方法でも効果は出るだろう。でも、それだけでは一知半解であり、せっかくの神経学のアプローチも片手落ちになる。神経学の理解が進み、さらに原理原則が分かればアプローチ方法は無限につくり出せるのである。丸山氏の言葉を拝借すれば、「神経学は何もできない、しかし、何をしてはいけないか? 何をして良いのか? という選択をすることができる」のである。

最高の先達

 先達として、丸山氏の講義は申し分ないと思う。増田DCの講義と比べてみても、懇切丁寧に神経学の魅力と、難しさを臨床に落とし込んで教えている。そういう意味では、増田DCよりも親切だ。増田DCのときより、受講生は何倍ものスピードで理解が進むはずである。

 正直なところ増田DCの講義は、理解不足もあって何を言っているのかわからなかったが、丸山氏の講義は良く理解できる。これは今だからわかることなのか? 丸山氏の講義が上手なのか? どちらも正解なのだろうけども、優れたガイドは神経学という山に登るには必要不可欠な存在である。

 簡単な山ならガイドも必要もないし、独学でも十分登れる。だけど、特に険しい山だと遭難する危険性も高いし、何より最短距離のルートを示してくれる。ただ最短距離と言っても、回り道に見えることもあるのが神経学なのだが。神経学に興味のある方は丸山正好氏の神経学臨床をニューラルヒーリングの施術例で見ることができる。

https://neuralhealing.jp/category/cases/

丸山正好氏によるWebセミナー「局在神経学講座『神経局在診断を読む』」の講座の一部(第23回「脳神経4」からの質疑応答部分)を下記のアドレスから観ることができます。

在神経学講座『神経局在診断を読む』(第 I 期)紹介ビデオ

https://youtu.be/KU_5zdE9eKs


山﨑 徹
(やまさき・とおる)

はやま接骨院(高知県高岡郡)院長
・看護師
・柔道整復師
全日本オステオパシー協会(AJOA)京都支部長シオカワスクール・オブ・カイロプラクティック
ガンステッド学部卒NAET公認施術者


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