第十一回 足関節の不安定性(後編) | カイロプラクティックジャーナル

  足関節の不安定性(後編)

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スポーツ・カイロプラクティック 足関節の不安定性(後編)2014.09.07

足関節の不安定性
カイロジャーナル67号(2010.2.24発行)より

足関節捻挫の経験者の約70%の人は、受傷後に継続的な痛みや不安定感などの症状を訴えると言われています。1-3 つまり慢性的な足関節の不安定性(Chronic Ankle Instability=CAI)へと進行します。足関節の不安定性は、機械的不安定性と機能的不安定性に分類できます。機械的不安定性はレントゲン検査などにより、客観的にその程度を判断することができるのに対し、機能的不安定性は患者の主訴などを質問形式で回答してもらうことにより判断されます。よって主観的要素が強くなるため、その診断には曖昧さが生じてしまう傾向があります。 足関節の機能的不安定性を判断する質問表には、代表的なものがいくつか存在します。それらには、Functional Ankle Instability Questionnaire(FAIQ) 4 や Ankle Joint Functional Assessment Tool (AJFAT) 5 、Cumberland Ankle Instability Tool (CAIT) 1 などがあります。 また足関節に機械的不安定性を持つ患者の全てに、機能的不安定性があるというわけではありません(このことに関しては、「機械的不安定性vs機能的不安定性」の項参照)。

機能的不安定性(Functional Instability)

機能的不安定性は、Freemanによって1965年に初めて定義されました。彼によれば、患者が「足関節捻挫の反復と(または)脱力感」を訴える場合、そのようなコンディションを機能的不安定性と定義しています。6 またKonradsenは、「外側側副靱帯や筋肉/腱にある機械受容器の損傷と、それに伴う自己受容反射(Proprioceptive reflex)の一部が遮断(求心路遮断)されること」が機能的不安定性の原因であるとしています。7 さらに足関節の感覚運動系の機能低下が、反復性内反傷害の主要因であることも、おおくの研究者によって示唆されています。6.8-10

足関節に影響を与える因子には、様々なものがあります(図1)。ここでは、以下の3つの項目に着目してみました。

  1. 固有受容器の機能低下
  2. 筋肉の反応速度
  3. 平衡感覚の異常

これらについて、以下に解説を加えていきます。

図 機能的不安定性に影響を与える因子

固有受容器の機能低下

機能的不安定性において、しばしば問題となるのが固有受容器の機能低下です。固有受容器は筋肉や腱、靭帯、関節包などの軟部組織に主に分布しています。そのため捻挫などにより、これらの軟部組織が損傷することで、そこに分布している固有受容器の損傷も起こります。

Gencrossらは、足関節捻挫患者における、患側と健側の足関節位置覚の研究を行っています。10 それによると、足関節捻挫患者では、患側の位置覚が著しく機能低下していることがわかっています。このことは、捻挫によって固有受容器の機能低下が起こっていることを示唆しています。

また足関節の安定性に関与している固有受容器が分布している領域についての研究も今まで多く行われてきました。Freemanらの研究よると、足関節の関節包靭帯複合体には、高密度で機械受容器が分布していることがわかっています。6 この研究結果から、足関節の補強構造である靭帯や関節包の損傷が、機械受容器の損傷(機能低下)につながり、それが足関節の不安定化を促すことが推測できます。

筋肉の反応速度

足関節捻挫の多くは、内反捻挫です。その際、下腿外側にある筋肉(腓骨筋群)や足関節の外側側副靱帯、関節包などの軟部組織に急激な伸張が生じ、大きな負荷が加わります。

足関節の動的安定性は、腓骨筋群が、いかに迅速に反応するかにかかっているとも言えます。足関節の急激な内反に対して、腓骨筋群が素早く収縮することによって、外側側副靱帯や関節包の損傷・断裂を防ぐことができるからです。

足関節の内反捻挫の発生率と、腓骨筋群の反応速度との関連性について検証した研究論文は数多く存在します。それらの研究論文の共通の見解は、腓腹筋群の反応速度の遅延が、足関節の内反捻挫の発症率を増加させる可能性があるということです。特に過去に足関節捻挫の受傷歴がある場合、足関節周辺にある関節包や靭帯からの求心性入力に問題が生じている可能性があるため、足関節の急激な内反に対し反応が遅延し、捻挫の再受傷に至ると考えられます。このことは、足関節の再受傷率が極めて高いという臨床的事実と合致しています。

Konradsenは、機械的に安定している足関節の腓腹筋群の反応速度について調べています。11 立位または歩行時に、被験者の足関節に急激な内反を生じさせた時、腓骨筋群の反応速度は54msでした。この研究においてKonradsenは、慢性的に足関節の不安定性を持つ被験者では、腓腹筋群の反応速度は著しく遅延していることを言っています。Bruntらによる研究では、グレードⅡの足関節捻挫の受傷歴を持つ被験者は、健康な被験者に比べ、腓骨筋群の反応速度に13msの遅延が認められました。12 Konradsenらは、機能的不安定性を持つ被験者を対象に、足関節へ急激な内反方向への刺激を加えることより、コントロール群との比較を行っています。13 その結果、足関節に機能的不安定性を持つ被験者では、長腓骨筋と短腓骨筋の反応速度が顕著に遅延していることがわかりました。

正常な足関節では、歩行やランニングの遊脚相において、下肢の筋群には筋活動がすでに生じています。14.15 このように踵接地(Heel contact)の前に下肢の筋群(腓骨筋群)に筋収縮が発生することにより、腓骨筋群の反応速度が著しく早くなります。16

また踵接地直前の遊脚相における足関節のポジションは、捻挫の発生率と密接に関係しています。踵接地において、足関節が通常よりも回外位である場合、足関節の回内筋(腓骨筋群)の反応速度が正常であっても、捻挫の発生率は高くなると考えられます。このとき距骨下関節(距踵関節)に作用する反力は、通常よりも大きくなり、より強い回外が発生する可能性があります(図2)。また足が地面に着地するとき、通常よりも底屈位である場合も、距骨下関節にはより大きな反力が発生します(図3) 17 足関節捻挫の受傷歴がある患者では、下腿の筋群が正常に機能していないことが、足部の不適切な着地の原因となっています。18

図2 踵接地における距骨下関節へ作用するモーメントアームは、距骨下関節が中立位(左側の写真)の時よりも、内反位または回外位(右側の写真)の時の方が、より大きな負荷が距骨下関節に加わる。

図3 踵接地(左側の写真)と足趾離地(右側の写真)における距骨下関節へのモーメントアームでは、後者(足関節底屈位)において、より大きな負荷が距骨下関節に加わる。

平衡感覚の異常

機械受容器は、関節包、靭帯、筋肉(腱)、皮膚などに分布しており、関節の運動やポジションのコントロール、さらに姿勢の維持(平衡感覚)などの機能を持っています。Garnらは片足立位バランステスト(One-legged standing balance test)を利用して、足関節捻挫の受傷歴を持つ患者を対象に、機能的不安定性の評価を行っています。19その結果、患側における平衡感覚に機能低下が認められています。Lentellらも同様の方法によって、足関節捻挫の受傷歴を持つ患者の平衡感覚を調べています。20 それによると、18人の被験者のうち、17人において、片足立位バランステストで陽性となりました。

機能的不安定性の評価法としては、重心動揺計を用いることもできます。そのようにすることで、結果を数値化し、より客観的に評価することが可能となります。Troppらは重心動揺計を用いて、平衡感覚の機能低下と足関節の機能的不安定性の関連性を評価しました。21 彼らによると、足関節に機能的不安定性を持つサッカー選手は、正常な選手に比べ重心動揺計により、著しい“ゆらぎ”が観測されました。しかし上記の研究結果とは相反する研究報告も、数多く見受けられます。Baierらは、足関節に機能的不安定性を持つ22日のアスリートの重心動揺の測定を行い、コントロール群と比較して大きな有意差は認められなかったと報告しています。22 またKinsellaらも、片足立位による機能的不安定性の重心動揺の測定を行い、同様にコントロール群との間に有意差は認められませんでした。23 しかしこれらの研究には問題点もあります。これらの研究で測定されているのは、静的なバランス(Static balance)です。しかし、関節周辺にある受容器(固有受容器や機械受容器)は、関節の角度が変化することで刺激(活性化)されるため、動的バランス(Dynamic balance)を測定することで、コントロール群との間に有意差が生じた可能性があります。動的バランスの測定には、Star Excursion バランステスト(Star Excursion Balance Test=SEBT)があります。これは非常に信頼性が高い検査法であると言われています。24 SEBTを利用して足関節の機能的不安定性を測定した研究報告では、コントロール群と被験者との間に大きな有意差が報告されています。25 この検査の測定法は、被験者に片足立位になってもらい、バランスを維持したまま、八方向に反対側の足(宙に浮いている側の足)を伸ばしていき、その足が届く距離を測定します(図4)。動的バランスの測定法には、片足ジャンプ着地テスト(Single leg jump landing test) というものもあります。この検査法は、片足ジャンプで着地してから、安定するまでに要した時間を測定します。Rossらの研究によると、足関節に機能的不安定性を持つ被験者は、片足ジャンプ着地テストにおいて、安定するまでにより多くの時間を要したと報告しています。26 このことは、足関節に機能的不安定性がある被験者は、動的バランスに著しい問題があることを示しています。これらの結果から、片足立位バランステストのような静的バランスの検査よりも、SEBTや片足ジャンプ着地テストのような動的バランスの検査が、機能的不安定性の程度を判断するためには適していると言えます。

図4 Star Excursionバランステスト(SEBT):右足関節の機能的不安定性を測定するときに用いるスケール。片足立ちになり、図の八方向へ反対側の足を延ばしてもらい、その到達距離を測定する。

注意:得点は一番右側になります。得点は被験者には見えないようにしてあります。
0~30、安定:27.5<、不安定:<24.0

Cumberland Ankle Instability Tool (CAIT)
得点
1.足関節に痛みを感じる
全くない 5
運動中に痛みを感じる 4
起伏のある地面を走るときに感じる 3
平坦な地面を走るときに感じる 2
起伏のある地面を歩くときに感じる 1
平坦な地面を歩くときに感じる 0
2.足関節に不安定感がある
全くない 4
運動中に時々感じる(常にではない) 3
運動中に頻繁に感じる(常に) 2
日常生活で時々感じる 1
日常生活で頻繁に感じる 0
3.急激な方向転換で足関節に不安定感を感じる
全くない 3
走るときに時々感じる 2
走るときに頻繁に感じる 1
歩くときに感じる 0
4.階段を降りるときに足関節に不安定感を感じる
全くない 3
素早く降りるときに感じる 2
時々感じる 1
常に感じる 0
5.片足立ちで足関節に不安定感を感じる
全くない 2
つま先立ちのときに感じる 1
踵をおろして立ったときに感じる 0
6.以下の条件で足関節の不安定感を感じる
全くない 3
横にはねたときに感じる 2
同じ場所ではねたときに感じる 1
ジャンプしたときに感じる 0
7.以下の条件で足関節の不安定感を感じる
全くない 4
起伏のある地面を走るときに感じる 3
起伏のある地面をジョギングするときに感じる 2
起伏のある地面を歩くときに感じる 1
平坦な地面を歩くときに感じる 0
8.足関節を捻りそうになったとき、それを防ぐことができる
即座にできる 3
ほぼできる 2
時々できる 1
全くできない 0
今まで捻りそうになったことがない 3
9.足関節を捻挫した場合、回復するまでにかかる時間
すぐに回復する 3
1日以内に回復する 2
1~2日以内に回復する 1
回復には2日以上かかる 0
今まで足関節の捻挫を一度も経験したことがない 3

機械的不安定性 vs 機能的不安定性

Troppらは、足関節の機械的不安定性と機能的不安定性の違いについて、明確な定義をしています。1 機械的不安定性とは、足関節を補強している靭帯の損傷により、正常な生理的可動域を超えている状態(亢進)であり、機能的不安定性とは、生理的可動域が必ずしも亢進している状態ではないが、関節の自発的運動が適切にコントロールできない状態のことです。

機械的不安定性は機能的不安定性の原因になり得ますが、機械的不安定性を持つ足関節がすべて機能的不安定性の特徴を併せ持つというわけではありません。27

444人のサッカー選手を対象にした研究によると、その128人に片側もしくは両側の足関節に機能的不安定性が認められました。機能的不安定性を持つ159の足関節のうち、66(42%)の足関節に機械的不安定性が認められています(図5)。21

図5 444人のサッカー選手を対象とした足関節の機能的不安定性と機械的不安定性の相互関係

足関節の機械的不安定性と機能的不安定性の関係を評価している研究論文には、さまざまなものがあります。片側の足関節に機能的不安定性を持つ45人の被験者に対し、Anterior drawerテストと距骨傾斜角の測定を行い、機械的不安定性の有無を評価している研究論文があります。28それによると、足関節に機能的不安定性を持つ45人のうち、11人(24%)に機械的不安定性が認められました。またLentellらの研究では、機能的不安定性は単独で存在する可能性を示唆しています。20 さらにBirminghamらは、片側の足関節に機能的不安定性を持つ30人の被験者を対象に機械的不安定性の有無を検証しています(健側の足関節を比較対象として利用)。29 それによると、健側と患側の足関節における内反可動域には、大きな有意差が認められませんでした。このこともまた機能的不安定性が単独に存在していることを示唆しています。これらの研究結果からわかることは、足関節に機能的不安定性が認められたとしても、機械的には安定している可能性が十分にあるということです。

参考文献
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