2004 7月カイロプラクティックジャーナル

  2004  7月

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日本のカイロプラクターの立場

投稿日:2004年07月22日

カイロジャーナル50号(2004.7.22発行)より

「日本のカイロプラクティックはこのままではいけない」と多くの関係者が考えているが、この15年を振り返っても、なかなか業界内の合意形成が得られないのがカイロ界の実情。議論する上での基本知識の共有がまだまだ不十分ということも原因の一つであろう。職業、教育という2つの点で、どのような規制や取り決めがあるのかまとめてみた。

1.カイロプラクティックという職業は、法的、行政的にどう位置づけられているのか。

医業類似行為なのか「カイロプラクティックは医業類似行為なのか?」と聞かれて、「医業類似行為は、あん摩マッサージ指圧、はり、灸(あはき)、柔道整復(柔整)のことだから、カイロプラクティックは医業類似行為ではない。カイロプラクティックは何の規制も受けない自由業のようなもの」と答える人がいる。しかしこれは正確な現状把握とは言えない。カイロは医業類似行為と考えなければ、いくつもの矛盾が生じるのである。

医業類似行為とは、あん摩マッサージ指圧師、はり師、灸師等に関する法律(あはき法)第十二条に出てくる用語である。第十二条には、「何人も、第一条に挙げるものを除くほか、医業類似行為を業としてはならない。ただし、柔整を業とする場合については、柔整師法の定めるところによる」とある。

では第一条にはどう規定されているのか。要約すると「あはきを業とするには、医師であるか、またはそれぞれの業を行うための免許の取得をしなければならない」という内容である。では、医業類似行為とは何なのか。これは医師法の「医業」と同様、法律条文には明記されていないのである。法律に定義されていない以上、何が医業類似行為に該当するかは、その言葉自体の意味や社会通念から判断することになる。

秋田県健康福祉部がかつてまとめた資料には「疾病の治療または保健の目的で行われる、医業に類似したもの(医行為の外辺にあってこれに類似する行為)」とされ、その上で次の3通りの医業類似行為のカテゴリーを説明している。

1.法律で定められた資格を持つあはき師、柔整師が行う、あはき、柔整の行為

2.あはき法十二条ー二に規定される同法施行時に届け出た既得権者が行う、届け出医業類似行為

3.昭和三十五年の最高裁判決以後、人体に有害ではない医業類似行為として自由開業するものが行っている医業類似行為

このカテゴリーは、

2.に該当する人のほとんどが全国療術師協会(全療協)会員であること、

3.の裁判の当事者が全療協会員であったこと、全療協以外の養成校ではこの概念がほとんど教えられていないことから、この3つのカテゴリー分けは、全療協会員にのみ適応されると考えられがちだが、医業類似行為を行う者すべてがこのカテゴリーのどこかに属するのである。

もっと言えば、大多数である3.のカテゴリーに属するカイロプラクターは、無資格で医業類似行為を行っているのであるし、1.に属する人でも、あはき柔整に含まれないカイロプラクティックという医業類似行為に関しては、無資格で行っていると解釈できるのである。

また、カイロ界のみならず、医業類似行為を行う様々な代替医療分野の従事者も行政上はこのカテゴリーで分類されるのである。平成3年の厚生省通達カイロプラクティックを規定する法律はないが、カイロプラクティックを現在最も直接的に規制するものは、厚生労働省健康政策局から各都道府県あての通知「医業類似行為に対する取り扱いについて」(平成3年)である。

通知には「医業類似行為またはこれと紛らわしい行為」の取り扱いと記述されているので、カイロプラクティックが医業類似行為なのか、これと紛らわしい行為なのか、場合によってどちらにでも判断されるのかは、よくわからない。いずれにせよ、その上で「いわゆるカイロプラクティック療法」の取り扱いについて、4つの項目、すなわち

1.禁忌対象疾患の認識

2.一部の危険な手技の禁止

3.適切な医療受療の遅延防止

4.誇大広告の規制

が挙げられている。

このうち3.と4.は、開業者が常識として注意深く従うべき事項と考えられる。

しかし1.にリストされている疾患は、カイロプラクティックが法制化されている国では日常的に対象とされているものが含まれており、志あるカイロプラクターにとっては残念な内容と言える。

また、疾患自体を対象とせず、ウェルネス/自然治癒力の向上を目的とした施術を行うという立場でその疾患を持つ患者を扱うことが、通達に抵触するかどうかは、注意深い判断が必要となる。

一方2.については「急激な回転伸展操作を加えるスラスト法」を危険が大きいために禁止としている。これは法制化されている国の規制とは大きな隔たりがあるように感じられるが、厳密に「急激な回転伸展操作」を解釈してみると、これに当たらないカイロプラクティック・アジャストメントの方法は様々な形で残されてはいるのである。

2.カイロプラクティック教育の国際基準とは何か。

「国際基準のカイロプラクティック教育」は、様々な団体が説明し、また実施されているが、「では何が国際基準なのか」と改めて問われると、意外に明確な答えが難しい。なぜなら「これが国際基準です」と言って見せられるような、詳細な世界統一基準は現在のところ存在しないからである。

国際基準を形作るいくつかの要素をそれぞれ見ていくことで初めて、現在の「国際基準」というものの輪郭が見えてくるのである。まず「国際基準」と言うからには、国際的な合意のもとに文書で示されたものが必要である。

これに当たるものは、「WFC国際教育憲章」(1997年採択、2001年修正)、「WFC政策宣言 カイロプラクターのタイトル使用」(2001年採択、2003年修正)である。

教育の国際基準に関する文書は他にも存在するが、少なくとも国際的な合意形成プロセスを経て作られた文書に限定すれば、WFC発表のものだけである。「国際教育憲章」は、卒前教育の基本精神を掲げたもので、教育レベルに関しては「法制化が整った既存の国と同等の、プライマリ・コンタクトの臨床業務能力を発揮できるレベルの専門教育を提供すべきである」と述べている。

つまり、既存のカイロプラクティック大学のプログラムのレベルが「国際基準」という解釈で、これだけなら分かりやすい。しかしここに、暫定処置として、段階的発展のための暫定プログラムを認める条項が含まれ、事をややこしくすることになる。暫定プログラムが「国際基準」かどうかは国際憲章を読む限り明確ではない。

「暫定プログラム修了者が国際基準を達成している」という立場をバックアップするのが「政策宣言 カイロプラクターのタイトル使用」である。ここでは「カイロプラクターの名称使用は、正規のカイロプラクティック大学の卒業生と、暫定措置としてその国の代表団体が認証した教育プログラムの修了者が使用可能」と述べられている。つまり「世界的にカイロプラクターであると認められるのだから国際基準を満たしている」との解釈が導かれるのである。

ところで暫定プログラムとは、現在日本で実施されているカイロプラクティック標準化コース(CSC)がこれに当たる。オーストラリアの法制化の際に既得権者に履修が義務づけられたプログラムに準じ、構成されている。「移行処置プログラムの認証は、暫定的にWFC代表団体が行う」との国際教育憲章の規定に基づきJACが行っており、RMITのCSCのみがこれまでに認証された。

今後の展開として、カイロプラクティック教育認証の専門機関であるCCEオーストラレシアや、CCEインターナショナルが実効ある基準を整備する可能性もある。CSCの学位プログラムとしての地位もより明確にされるかもしれない。10月に開催されるWFCの教育会議でも新たな進展が期待される。そしてWHOによる教育と臨床のガイドラインも近い将来発表されることになるだろう。正規の大学教育以外の「国際基準の教育」は「暫定措置」とされながらも、今後はその位置づけがよりはっきりしてくる可能性もある。


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