再考 医業類似行為 最終回 | カイロプラクティックジャーナル

  再考 医業類似行為 最終回

カイロプラクティック、オステオパシー、手技療法の最新情報、セミナー案内、関連書籍・DVDの販売

カイロジャーナル TEL.03-3434-4236 〒105-0013 東京都港区浜松町1-2-13江口ビル別館

再考 医業類似行為 最終回

「ずんずん運動」による乳児死亡 逮捕容疑に残る疑問
カイロジャーナル91号(2018.2.26発行)より

医業類似行為は「健康に害をおよぼす恐れ」がなければ自由営業可で、あれば取り締まり対象となるとされている。しかし乳幼児2人が死亡した最悪の事件で適応されなかった。

因果関係の立証どこまで?

事件の概要

ずんずん運動と称する独自マッサージを乳幼児に施し、窒息状態で死亡させる事件が2013年に新潟で、14年に大阪で立て続けに起きた。二件ともNPO法人子育て支援ひろばキッズスタディオン(事件後解散)理事長の施術による死亡だったが、新潟の事件は当初、死因の特定が困難なため証拠不十分で不起訴となった。このため、施術は東京や大阪で続行され、危険性の情報は全く共有されず、2人目の犠牲者が出た。

大阪府警での逮捕後、新潟地検で捜査が再開され、「死因は窒息死であり、施術行為の因果関係が認められる」として逮捕された。判決は、大阪府、新潟県とも業務上過失致死罪で、執行猶予付だった。

大阪の被害者の両親は逮捕後「公表されていれば絶対に連れて行かなかった。同じことが二度と起きないよう、行政にも対応を検討してほしい」と訴えた。判決後の記者会見では「極めて軽い判決。このままでは同じことが繰り返されてしまう」と無念さを語った。新潟の両親は判決後「捜査機関が息子の死と施術の関係を明らかにしていれば、大阪での被害を防げたのではないかと思うとつらい」とコメントした。

医業類似行為違反ではないのか

無資格での医業類似行為は「人の健康に害をおよぼす恐れがなければ禁止処罰の対象にならない」とする1960年(昭和35年)の最高裁判例を根拠として認められている。ずんずん運動の場合、新潟で事件が発生した段階で、「人の健康に害をおよぼす恐れのある医業類似行為」として取り締まれなかったのはなぜだろうか。ずんずん運動は「体の機能を高めるベビーマッサージ」と宣伝していたのだから、医業類似行為と認知されて当然だし、死亡との因果関係が立証できなくても「健康に害をおよぼす恐れ」があったことは明白だろう。

警察による取り締まりがなかっただけでなく、判決でも医業類似行為違反は問われず、業務上過失致死罪だった。なぜ医業類似行為違反は問われないのか。現時点までの取材ではわからなかった。今後伝えられることは新たに発信していきたい。

医業類似行為 用法や業務範囲 明らかにすべき時

法令で定義されていない用語

本紙は医業類似行為の定義を「医師法17条に抵触しない方法により、保健目的で他人を施術する行為」と暫定的に決めている。医業類似行為は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律(あはき法)の第12条で使用されている用語だが、法令で用語が定義されているわけではなく、含まれる範囲も明らかにされていない。

医師法17条の「医師でなければ医業をなしてはならない」の条文に対して、あはき法では「あはき師でなければ医業類似行為をしてはならない」とは書かれていない。あはき師は、それぞれの業務範囲の医業類似行為ができると書かれているだけである。業務範囲外医業類似行為を有資格の名のもとに行うのは違法である。こういったことが事態をわかりにくくしており、数十年にわたるこう着状態の一因になっている可能性がある。

医業類似行為は用法として、狭義と広義があるという考え方があり、役所でもしばしば使い分けられているようだ。狭義とは、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師(法定4業務)を指す。広義とは、医業に類似する行為、医業周辺の行為であるとされる。

しかし、狭義は法定4業務と言い換えられ、その方が明確である。狭義と広義という括りは、中心、王道は法定4業務で、周辺、辺境が無資格医業類似行為といったイメージにつながりやすく、無資格側はこの括り方を安易に受け入れないのが賢明ではないだろうか。

医業類似行為は療術を指していたという歴史上の経緯からも、狭義では法定4業務とするのは適切でない。現あはき法の旧法(昭和22年制定)19条には、医業類似行為を業としていた人が業務を存続するための特例処置が記載されており、ここでの医業類似行為者とは法定4業務以外の療術師のことだった。19条あっての12条だったが、19条撤廃で医業類似行為の意味はさらにわかりにくくなってしまったと言えるだろう。

厚生労働省はもちろんのこと、今や消費者庁、国民生活センターも医業類似行為の安全性に注意を喚起する時代となった。各都道府県もこの流れに準じている。医業類似行為の安全な利用を国民に促すのであれば、あいまいな概念用語のままでは不十分ではないか。医業類似行為という用語の用法や業務範囲を法令で明らかにする時期が来ているのではないだろうか。 

安全性の確立を目指して 「現状では難題」

現在の警察の対応は、医業類似行為違反は問わないものと見受けられる。しかし国民生活センターが平成24年に「手技による医業類似行為の危害」を、消費者庁が平成29年に「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」を公表し、医業類似行為への規制が強化されつつある印象は否めない。

事態の対応策として、複数の業界団体が安全性を確保するための教育プログラムを新たに開講した。これら政府の動きとの連動ではなく、以前から独自で安全教育を実施する団体もある。むしろほとんどの団体で安全性確保のための教育は行われて来ている。

今後の課題は「個々の団体は安全教育の質をどうやって確保するのか」「教育の質が十分であることをどのように行政や一般の人々に納得してもらうのか」である。公的専門教育、公的資格試験、免許といった国内的な質の担保が全くない現状では難題である。せめて業界全体の一定以上の安全教育基準策定のために、業界内の合意に向けた協力が必要ではないだろうか。

ずんずん運動の事件発生から判決まで

2013年2月 新潟県でずんずん運動の施術後、1歳10カ月の男児が死亡
2013年11月 業務上過失致死の疑いで新潟地検が書類送検。12月、嫌疑不十分で不起訴
2014年6月 大阪府でずんずん運動の施術後、4カ月の男児が死亡
2015年3月 大阪府警が業務上過失致死容疑で逮捕、起訴
2015年6月 新潟検察審査会が起訴相当と議決し、新潟地検で再捜査開始
2015年8月 大阪地裁で、禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決
2015年11月 新潟地裁で、禁錮1年、執行猶予4年の有罪判決

お問い合わせ:カイロジャーナル

住所〒105-0013 東京都港区浜松町1-2-13 江口ビル別館6F
TEL03-3434-4236
FAX03-3434-3745
E-mailbook@sci-news.co.jp
facebook公式ページへのリンク

長期連載中の記事

過去の連載記事