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  消費者庁、医業類似行為に言及

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消費者庁、医業類似行為に言及

事故情報をもとに消費者に医師への相談を奨励
被害者の申し出そのまま羅列、科学的裏付けなし
カイロジャーナル90号(2017.10.22発行)より

消費者庁消費者安全課は「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」 を5月26日に公表した。全文を消費者庁ウェブサイト(http://www.caa.go.jp/ )から観閲できる。また、同時にカイロプラクティック、リラクゼーションなどの関係団体に対し、安全対策の要請を文書で通知した。

法的な資格制度がない治療を受ける場合には、医師への事前および異常を感じた場合の早期の相談を奨励し、近くの消費生活センターでも相談できることを紹介している。今回の公表に伴い、消費者庁は関係業界団体に対して「カイロプラクティックの施術に関する安全対策について(要請)」を送付した。

消費者庁ニュースリリース概要

「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」概要(※1)

1.法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術について

器具を使用しない手技による施術で、日本で行われているものは、法的な資格制度がある施術と、法的な資格制度がない施術の2つに大別されます。厚生労働省では、あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう及び柔道整復以外の医業類似行為については「医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあれば禁止処罰の対象にすること」、また、いわゆるカイロプラクティック療法については「禁忌対象疾患の認識」、「一部の危険な手技の禁止」、「適切な医療受療の遅延防止」等の取扱いをすること定めています。

2.事故情報について

消費者庁には、法的な資格制度がない施術による生命身体への危害の情報 が 1,483件寄せられています(平成21 年9月1日から平成29年3月末)。そのうち、治療期間が1カ月以上の重症となる事故が 240 件と全体の約 16%を占めています。施術(手技)の内容では「整体」「リラクゼーションマッサージ、「カイロプラクティック」などでの事故が多く、特に「整体」「カイロプラクティック」などが、治療期間が1カ月以上となる事故の割合が高くなっています。

3.事故事例

神経を痛めた事例

【事例1】「カイロプラクティック」の施術直後からしびれが発生し、医師に「尺骨神経まひ」と診断されて手術をした。

希望以外の部位を施術された事例

【事例2】膝が痛くて「カイロプラクティック」に行ったが、承諾なしに顔の歪みの施術をされ、その後顔の痛みが続いいた。

【事例3】「整体院」で肩の施術を頼んだのに胸部を施術をされ、ろっ骨を骨折した。

疾病や持病がひどくなった事例

【事例4】けい椎脊索狭さく症で通院中に「整体」に通い、3回目の骨格調整の施術後、激しい痛みが3週間以上続いた。

好転反応と言われ、施術を続けて症状が悪化した事例

【事例5】腰痛で「整体院」に行ったが、痛みがひどくなった。施術者に伝えると、好転反応なのでしばらく続けるように言われたが、数回目の施術後、骨盤の痛みがよりひどくなった。

痛いと伝えたのに施術を続けられた事例

【事例6】腰痛で「カイロプラクティック」の施術を受けた。首をねじられとても痛かったので申し出たが、痛い方が効き目があると言われ、やめてくれなかった。翌日から首がとても痛くなり、整形外科でけい椎がねじられて損傷していると言われた。痛みが5カ月以上続いている。

首の施術による事故事例

【事例7】肩こりで「整体」の施術を受けた際、頭をつかまれて引っ張られた。その後激痛、手のしびれなどが生じ、末しょう神経障害等と診断され、数カ月たっても痛みが残っている。

【事例8】首と肩の「格安マッサージ」を受けた翌日に、おう吐と首から肩にかけての激痛が出た。病院で髄液が漏れていることが判明し、11 日間入院した。

骨折した事例

【事例9】腰痛で「整体院」で施術後に胸の痛みが回復せず、病院でろく軟骨骨折と診断された。

【事例10】「サロン」でリンパマッサージ施術中に痛みがあり、ろっ骨を骨折していた。

その他の事例

【事例11】無資格「マッサージ店」で施術後に足が痛く歩けなくなった。医師に太ももの筋肉が切れていると診断された。

【事例12】「リラクゼーションサロン」で施術後に両腕が赤く腫れ痛み出た。医師に内出血で全治3週間と言われた。

【事例13】美容マッサージを施術後痛みが消えず、医療機関で打撲と診断された。

4.消費者の皆様へ

「整体」「カイロプラクティック」「リラクゼーションマッサージ」などの法的な資格制度がない施術を受ける際は、以下の点に気を付けましょう。

〈施術前〉

⑴疾病がある方は施術を受ける前に医師に相談しましょう。

  • 疾病がある方は、症状によっては、施術によって症状がひどくなってしまう場合もあります。

⑵情報を見極めて施術や施術者を慎重に選びましょう。

  • 施術には有資格のあん摩マッサージ指圧及び柔道整復もあります 。
  • 「統合医療」は多種多様であり玉石混交とされています。

〈施術中〉

⑶施術を受ける際は、施術者に自分の体調や希望をしっかりと伝えましょう。

〈施術後〉

⑷施術を受けた後で異常を感じた場合は、すぐに施術を受けた施設や運営者に伝え、なるべく早く医師に相談しましょう。
⑸トラブルの解決が困難な場合は、お近くの消費生活センター等に相談しましょう。

日本カイロプラクターズ協会の見解

日本カイロプラクターズ協会(JAC)は、内容が公開されると「この通達の公表に反対である」との見解をウェブ上で発表した。以下は内容の要約(※2)。

今回の注意喚起の通達は、

  1. 内容が架空の被害報告の可能性
  2. カイロプラクティックの名称を用いる施術者の教育背景
  3. 施術者が用いる手技と患者の訴える被害の間の因果関係

の3点の検証がされていない。

これでは「エビデンスに基づく調査なしに安全対策と称した通達を公表すること」になり、この発表は「国民の不安感を喚起し、正当に業務に携わるカイロプラクティック施術者の営業権を侵害するばかりか、ひいては消費者庁の使命である『安心・安全な社会の実現』を妨げることになる」。通達を発表する場合には「エビデンスの検証と厚生労働省と連携した今後の対応策に関する検証が必要不可欠である」。

また、JACの見解として、次の6項目を挙げた。

⑴ 厚生労働省の通知「医業類似行為に対する取扱いについて」

1991年6月28日に出された厚生労働省の通知「脊椎原性疾患の施術に関する医学的研究」(三浦レポート)には客観的なエビデンスが存在していないため、エビデンスに基づく同レポートの再検証、新たな現状調査の実施が必要である。

⑵ 禁忌対象疾患の認識

厚生労働省医政局医事課へ登録者名簿を提出している日本カイロプラクティック登録機構(JCR)はWHO指針の教育課程を履修したカイロプラクターの試験及び登録制度を実施している。JCR登録者は禁忌対象疾患の知識を有しているため、安全対策として消費者にカイロプラクティックを受診する際は「JCR登録者」を選択するよう勧告することが望ましい。

⑶一部の危険な手技の禁止

カイロプラくティック・アジャストメントが危険であることを示す客観的な統計調査の裏付けはなく、頸椎マニピュレーションによる事故の発生頻度は医療事故の発生頻度に比べるとはるかに低いことが文献から明らかである。治療の危険性は施術者の教育背景により大きく変わる。

⑷「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」

この文面は消費者に対してカイロプラクティックの危険性のみを強調し、受診を控えるよう勧告している印象を与える。カイロプラクティックの定義、整体・リラクゼーションとの違いについての記述がない。

⑸エビデンスに基づく安全対策の提示

安全対策のすべてを当業界の自主規制に委ね、カイロプラクティックの危険性を誇張する消費者庁の通達は消費者の混乱を招く。

⑹カイロプラクティックに係わる安全対策の公表は、次の項目も同時に公表するよう要望した。

  • 事故事例も含めてエビデンスが不明である事実を明記する。
  • 自称カイロプラクターが多い国内の現状や「カイロプラクティック」の定義を明記する。
  • 報告された事故事例の内容の真偽の確認、カイロプラクティックの名称を用いる施術者の教育背景、施術行為と健康被害との因果関係についての検証を行う。
  • JCRのカイロプラクター登録制度を紹介する。
  • 米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)のカイロプラクティックに関する安全性と有用性の情報を公開する。

当会の活動内容:消費者庁所管の独立行政法人国民生活センターの要請による「カイロプラクティックの安全性及び広告に関するガイドライン」の発行、「安全教育プログラム」の開講。当会会員は禁忌対象疾患の認識を理解するのに必要な知識を有し、 適切な医療受療については倫理規定により周知徹底している。

他団体の対応

消費者庁は「カイロプラクティックの施術に関する安全対策について(要請)」として、いくつかのカイロプラクティック関係業界団体に文書を送付した。具体的には、

  1. 1991年の通達「医業類似行為に対する取扱いについて」に基づいて、安全対策に務めること
  2. 窓口の設置等、消費者からの申し出に対応する体制を整備すること

の2つを要請した。

日本カイロプラクティック協同組合連合会(JFCP)は、カイロプラクティック安全施術講習会を定期的に実施し、カイロプラクティック制度化推進(準備)会議を通して対策を推進すると表明した。

治療家ができるのは患者への誠実な対応

今後に向けて

消費者庁が「医療類似行為」の用語を使用して国民に注意を促したのは今回が初めてで、画期的なことだ。JACとJFCP以外のカイロプラクター養成機関にはこの文書は送付されなかったが、これを機会として、各施術者、団体が安全対策に力を入れる取り組みをすれば、業界の活性化につながるだろう。

これまで真っ当に安全対策に取り組んできた個人や業界団体であれば、消費者からの一方的な報告の羅列が大部分を占める今回の文書に違和感を覚えるだろう。科学的な裏付け情報を提供せずに危険性を警告することに何の価値があるだろうか。消費者にとっての有用な情報の提供をせず、不安を助長するだけの事故防止対策は公平さに欠ける。

医業類似行為という職業上の立場というものは、歴史の狭間に置き去りにされたようなもので、簡単に理解されるものではない。カイロプラクティックの価値もまた、他の療法との違いから始まっていくらでも議論でき、世間の人々に簡単には理解されない。

治療家個人は、今回の消費者庁文書が行政や一般的理解であることを肝に銘じ、患者一人ひとりに誠実に対応していくしかないだろう。そのためには、十分に安全な施術を行える知識と技術を必ず身につけなければならない。

一般に向けてのカイロプラクティックの説明には、厚生労働省「統合医療」に係る情報発信等推進事業のウェブサイトの「カイロプラクティック」の項目が役立つ(※3)。これはNICCHの説明の全訳で、カイロプラクティックの有効性、安全性など、患者が最も知りたい科学的根拠となる情報が掲載されている。

※1
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/release/pdf/consumer_safety_release_170526_0002.pdfに全文が記載されている「法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に」から本紙が要約。

※2
http://www.jac-chiro.org/research_06.htmlに全文が記載されている「『法的な資格制度がない医業類似行為の手技による施術は慎重に』に対する当会の見解および対応」から本紙が要約。

※3
http://www.ejim.ncgg.go.jp/public/overseas/c02/04.html

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