フレキシブルに原点回帰 第6回 | カイロプラクティックジャーナル

  フレキシブルに原点回帰 第6回

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フレキシブルに原点回帰 第6回

精神面が健康を左右
中2女子の症例で再確認
カイロジャーナル88号 (2017.2.19発行)より

カイロプラクティックは、申し上げるまでもなく、科学、哲学、アートから構成されていますが、同時に、健康増進を阻害するストレッサーとして、化学的、構造的、そし精神的因子が関与すると、伝えられてきました。しかしながら、実際の臨床では、それぞれがどのように人体に影響を及ぼすかについて、十分に考慮せずに患者様にアプローチをしてしまうこともあることでしょう。

以前に問診の重要性について寄稿させていただきましたが、その問診の結果を元に、構造的に「サブラクセーションを取り除くこと」に重点を置くことはないでしょうか。ときに時間を要する治癒過程を含むアートの領域に期待しつつも結果が伴わない場合に、ストレッサーとしての精神的因子に「ハッ」と気づかされることもあると思います。

8年前のある日、母親に連れられた中学2年生の女子学生が来院されました。主訴は、頻繁に繰り返す頭痛と嘔吐でした。そのため、学校を早退や遅刻、欠席することが多かったそうです。数軒の脳外科を受診後、総合病院にて諸検査を受けるも、すべて結果に異常所見は見られず、藁にもすがる思いでお越しになられました。

問診を含む一連のカイロプラクティック検査をした結果、明らかに上部頚椎に問題がありました。同時に、問診の際、娘に答える隙を与えないかのように先に返答してしまう母親にも違和感を覚えました。「もしや?」と感じ、リストカットの形跡の有無をチェックすべく、彼女の手首を確認しましたが、傷痕らしきものはなかったため、私は構造的サブラクセーションに焦点を当てたケアを施しました。アジャストメント後に、再確認のため諸検査を行った結果、私は満足を得てしまいました。表情が優れないままの患者様には、時間を要すものと信じて、その日はお帰りいただきました。

数日後にお越しになり、私は改善の言葉をお聞きできるものと信じておりましたが、母親からその後も特に変わりはなく、その日も学校を欠席したことを告げられ、アプローチを変える必要性を感じました。

そこで、精神的因子とサブラクセーションとの因果関係に焦点を当てました。私は、カウンセラーでもなければ精神科医でもありません。カイロプラクターとして、私から思い当たりそうないくつかの質問を投げかけました。それらに対して、決して口に出して返答することなく、ただ頭の中で考えるにとどめていただきました。また、母親にも返答することのないように協力を要請しました。母親は、私が投げかけた質問の一言一句をノートに取っていました。その後に触診を含むカイロプラクティックの検査をしたところ、前回とは異なり、上部胸椎にサブラクセーションが現れたのです。私はその部位にアジャストメントを施しました。

数日後に来院された時、母親から嘔吐をしない日が1日あったと伺いました。それまでは、最低でも1日に1度は嘔吐をしていたことをその時に初めて知らされた私は、問診の甘さと構造的問題に固執した自分を反省しました。ご本人は、相変わらず無表情でしたが、幸い、母親にはこの少しの変化に喜びと希望をお感じいただけたようでした。私は同様のアプローチを、週1回ペースで3週間繰り返しました。通院のたびに嘔吐の回数は減少し、頭痛も軽減していきました。そして翌週、ついに彼女は嘔吐をしなくなり、頭痛もほとんど感じないと、直接ご本人の口から聞くことができました。ほんの少しですが、笑顔も見せてくれました。

それから3年の月日を経て、母親から電話が入りました。何か急変でも起きたのかと不安になった私をよそに、その後、お嬢さんは希望と目標を見出し、地元から離れた高校へ進学し、もうじき1年間の交換留学を終えて帰国するとの嬉しいご報告を受けました。そして「今だからお話できますが」との前置きのあと、中2当時の彼女は失意に陥り、一時は自死を考えていたことを母親から告げられました。そして、私が投げかけた質問の一つひとつに、母親も心当たりを感じたとおっしゃいました。

精神的因子がもたらすサブラクセーションによるこの症例は、私には数少ない貴重な経験となりました。精神面は、今後も益々人々の健康を左右する重要な因子となることでしょう。新しいようで、実は100年以上も前に既に気づいていたDDパーマーの偉大さを再認識すると同時に敬意を払い、原点回帰させていただきました。

後藤 雅博D.C.(ごとう・まさひろ)

後藤カイロプラクティックオフィス院長(北海道帯広市)

1991年、パーマー・カイロプラクティック大学卒業

日本統合医療学会会員

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