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Chiropractic In the World 「新生カイロ」公的医療参入のために

現状維持なら異端のまま
豪専門誌が10の指針

カイロジャーナル87号 (2016.10.15発行)より

カイロプラクティックが法制化され、医療として認められている国々であっても、公立病院でのカイロ・サービスの充実や、カイロの保険適応の拡大を目指すなど、公的医療の中にカイロを組み込んでいくことは大きな課題となっている。オーストラリアで、カイロのオンライン専門誌『カイロ&マニュアル・セラピー』の編集長を務めるブルース・ウォーカー氏は、同誌に「新しいカイロプラクティック」と題してカイロ発展のための10項目の指針を発表した。論文は、科学的根拠のないカイロ・イデオロギーの弊害を解き、科学的手法に基づく合理性のあるサービスに徹する重要性を強く主張する。サブラクセーション診断は真っ向否定、一部のカイロプラクターからの反発に屈せず未来を開こうと呼びかける。公的医療への参入を果たすためには、当然の方針なのかもしれない。論文概要を翻訳して掲載する。

職人から専門職へ

マニピュレーション、手技療法には、何千年もの歴史があるが、西側諸国で最も広く実施されているのはカイロと言えるだろう。脊椎の痛みに対してカイロが有効であることは科学的に裏付けられており、カイロは職人から専門職へと移行した。しかしカイロがヘルスケア専門職として完全に認められるのを遅らせる多くの内的、外的要因がある。この困難な状況から、カイロがヘルスケア専門職として公的に完全に認められるための10プランを述べる。

よかった点、悪かった点

カイロ誕生から120年が経とうとしている。この間のよかったこと、利点と、悪かったこと、不利点を考察してみる。カイロは、少ない経費で痛みと障害を改善し、生産性を上げることで、医療と公共の利益に貢献してきた。利点が不利点よりずっと多いということを確認した上で、不利点を述べる。

不利点とは、専門職の評判を著しく損なう原因となった次のような行動や宣伝である。不完全な概念であるイネイト・インテリジェンスとバイタリズムへの執着。診断用語としてのサブラクセーションの使用。ワクチン反対運動。理学療法への反対。過剰な検査治療行為。ウェルネスの名のもとでの生涯カイロ・ケアの推進。内臓その他の筋骨格系以外の症状が改善するという宣伝。薬と医療への反対運動。フルスパイン・レントゲン撮影の強要。免疫とサブラクセーションの因果関係の宣伝。科学的臨床研究結果の無視。

専門職の今いる位置

カイロの法制度や免許制度がある国は多い。多くが私立のカレッジで運営されており、正規大学のプログラムは少ない。病院でのカイロ・サービスはごくわずかであり、研究はまだ始まったばかりと言える。

多くの治療家は、地域に貢献できる十分な資質を持っており、よき市民でもあるが、問題行動を起こす人も未だにいる。このような人は、この専門職の評判を傷つける原因であり続ける。その結果、他の保健専門職からの評判は悪いままである。

カイロは現状維持であれば、今と同じように代替補完治療者としてただ異端にとどまる。完全に価値ある機能を発揮する専門家として認知され、次の世代でカイロが発展するために、10項目プランが策定された。もしこのプランが採択されても、かなりの時間が必要だろう。カイロの若い世代が、意欲を持って取り組み、発展を見届けてほしい。そうすれば、カイロの評判は、強化され、カイロがヘルスケア提供の合理的パートナーと認められるようになるだろう。この目標は、長く高潔なキャリアを望む若い世代の野心と合致すると言えるだろう。

10項目プラン
合理的サービスに徹しよう

①カイロ専門教育の改善
●正規大学かカレッジか?

カイロ教育は、正規大学で行われるのが望ましい。理由はまず、正規大学は公的資金で運営されており(オーストラリアの場合)、教育はエビデンスに基づくことが厳しく求められ、スタッフは研究を行うことが要求される。私立カレッジの教育は、米国その他でみられるが、指導者が質の高い研究を要求されることはなく、博士を取得することが求められることも通常ない。世界的にカイロの教育者が研究に取り組めば、カイロの知識が蓄積され、その恩恵が受けられる。

●アクレディテーション

サブラクセーション・ベースのコースがアクレディテーションの過程で認められるのは問題である。他にどんなに優れた面があろうと、それは合理的アクレディテーションと言えない。

●病院トレーニング

関連病院との提携を持つべきである。特に本当に病気の患者を観察し、理論として習った症状、兆候を観察することは大切である。他業種との健全な交流にもなる。

②アイデンティティの確立

カイロプラクターは、脊椎に力点を置いた筋骨格系のみの治療家になるべきだ。この分野でエキスパートとなれば、必要な敬意は得られる。そうすれば、奇妙な信念を持った代替医療共同体と見なされて、愚弄の対象となることもない。職業としての「脊椎ケア・モデル」は、カイロ文化の権威と妥当性の手段である。その利点は、カイロ・ケアを医療の主流に統合する手助けとなると同時に、カイロのアイデンティティはそのまま保たれることだ。脊椎の痛み専門家というアイデンティティは、現在と将来のエビデンスにより担保される。将来のアイデンティティを担保するのは、エビデンスであって、イデオロギーやドグマではない。

③関心事項の共有

カイロ特有かつ一般的な問題でもある事柄に対し、共通の関心項目を持つべきである。研究、臨床、またはその両方に基づく興味を共有し、それをベースに医療に貢献すべきだ。例えば、姿勢の改善、高齢者の筋骨格系のケア、骨密度の改善などである。このことが医療職の中での地位確立につながる。

④業界内ナンセンスの拒否

プロのカイロプラクターであれば、軌道をはずれた考えを提示する人に寛容であってはならない。同僚が一線を越えたなら、しかるべき報告を行い、行政による調査が行われるべきである。多様性の名の下で許容することは、合意したとみなされる。怪しい理論や危険な治療の疑いがあれば、確証がなくても報告するべきだ。それは背信行為ではない。短期的には多少の混乱があっても、将来的にはよい方向に進める。

⑤公衆衛生への積極的関与

カイロ業界と開業者は、証拠に基づく医療の普及活動に積極的に関わり、健康増進、病気予防に積極的であることが奨励される。特に骨粗しょう症や、転倒による骨折の予防、エルゴノミクスの改善などである。また、カイロ業者によるワクチン反対や乳幼児への脊椎マニピュレーションの強要など、不適切な行動に反対の意を表明すべきだ。これによりカイロの評判回復と公衆衛生の両方に役立つことができる。

⑥カイロ団体のサポート

完全に倫理的でエビデンスベースのカイロ団体に入会して、サポートすべきである。倫理のリップサービスをする団体を見極めるには、言葉ではなく実績と行為で判断しなければならない。何十年にもわたって評判を傷つけてきた団体に謝罪をさせるべきだ。
団体をサポートすることと同等に価値があるのは、サービスや説明責任の要求である。

カイロの宣伝や、メディアでの紹介は団体が率先して行うべきである。例えば腰痛へのカイロの利点を定期的に宣伝することなどが期待される。それらはエビデンスベースで、論争の余地がない形でなければならない。

⑦臨床の質の改善

健康につながる結果を出すことで、カイロは社会に貢献できる。この点から何をし、なぜ行うかを徹底的に吟味しなければならない。カイロの不均一性はよく指摘されるが、今後も続けていいわけではない。履歴、検査、治療の選択、アドバイスなどはエビデンスに基づかなければならない。将来のカイロはもっと効率的で安全であり、効果が高くなっているに違いない。

薬の処方やその他の介入を筋骨格系疾患に役立つなら採用することも含め、変化を恐れてはならない。薬については、薬反対ドグマではなく、費用対効果こそが将来の問題だ。他分野との協力も望ましい。

⑧証拠に基づく診療(EBP)

EBPは、科学的証拠、臨床経験、患者の価値や環境を考慮する。ここで排除すべきは、治療者のイデオロギーである。これは自己中心的で危険な考えである。EBPの選択はカイロの将来にとって重要だが、業界内にはまだ抵抗がある。例えば、研究よりも臨床ベースのエビデンスが信頼できるという考えだ。しかし効果の証拠とするには、何に比べてどれくらいという視点が必要なのである。臨床家は最新のエビデンスを知るために生涯学習が大切だ。

⑨研究のサポート

専門職として、臨床と教育に役立つ研究に熱心に取り組まなければならない。それなくして発展はない。過去45年間、理学療法に論文数で大きな差をつけられている。カイロの研究者というキャリアが開拓されるべきで、すべての大学のカイロ・スタッフは、PhDなど研究者としての称号を取得すべきだ。ほとんどの臨床家は研究に関与しないが、資金援助、そして要請があれば協力を惜しまないことだ。

⑩個人的リーダーシップ

各人が変化を起こすためのリーダーシップを発揮せねばならない。目標設定、障害の特定、障害を克服する行動、長期の努力。自分の時間を提供し、プランを個人やグループでつくることだ。常に公共の福祉と患者ケアを行動の指針とすることだ。

これらを採択することで、一世代で状況を変えられる。重要なのは、社会と将来世代に対し、現役世代は責任があるということだ。このプランの実行で、新たな道、新たな出発、新たな方向を設定できる。これこそ「新しいカイロ」と知られるべきだ。
(出典:Bruce F. Walker. The new chiropractic.Chiropr Man Therap.2016;24:26 http://chiromt.biomedcentral.com/)

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