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  第30回 足根中足関節のバイオメカニクス

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スポーツ・カイロプラクティック 第30回 足根中足関節のバイオメカニクス2017.01.01

カイロジャーナル87号 (2016.10.15発行)より

足根中足関節(tarsometatarsal joint、TMT 関節)は中足部にある滑膜性関節であり、遠位足根骨(立方骨、楔状骨(内側、中間、外側))と中足骨(底)によって構成されています(図1)。リスフラン関節とも呼ばれています。また、中足部は三つの部位に分類することができます(図2)(※2,4)。

図1 足部上面図
図2 中足部の三分類①第1中足骨、内側楔状骨、②第2中足骨、第3中足骨、中間楔状骨、外側楔状骨、③第4中足骨、第5中足骨、立方骨の三つの部位に分類される。


TMT関節の最内側は、内側楔状骨と第1中足骨によって構成されています(第1TMT関節)。この関節には他の部位とは独立した関節包があります。また第2TMT関節は、第2中足骨、中間楔状骨、外側楔状骨によって構成されています。第2中足骨は、周囲を5つの骨(楔状骨、第1中足骨、第3中足骨)によって囲まれているため、第2TMT関節はTMT関節の中で最も可動性制限が強くなっています(図3)。つまり、第2TMT関節はTMT関節の中で最も安定した関節であると同時に、第2中足骨底は疲労骨折の好発部位にもなっています。さらに第3TMT関節は、第3中足骨と外側楔状骨によって構成されており、第2TMT関節と関節包を共有しています。最後に第4TMT関節と第5TMT関節は、第4中足骨、第5中足骨、立方骨と関節を形成し、関節包も共有しています。

図3 第2足根中足関節は周囲を5つの骨によって囲まれているため、大きく可動域が制限されている

靭帯による補強

TMT関節は非常に強固な靭帯によって補強されています(※2)。TMT関節を補強している靭帯は、背側、骨間、底側の3つに分類され、中足骨(底)の間、また楔状骨、立方骨の間を結合しています(※1)。 しかし、第1中足骨底と第2中足骨底の間には靭帯による結合がありません。その代わり、第2中足骨は中間楔状骨から伸びる靭帯によって補強されています。この靭帯はリスフラン靭帯と呼ばれています(図4)。この靭帯は内側楔状骨の外側から第2中足骨底の内側に伸びており、底側靱帯と背側靭帯の間に位置しています(図5)。また、TMT関節周辺にある靭帯の中で最も強い靭帯です。

図4 足根中足関節(TMT関節)の靭帯 第1中足骨底と第2中足骨底の間には靭帯が存在しないことに注目。第2中足骨底は内側楔状骨から伸びる靭帯(リスフラン靭帯)によって強力に補強されている

図5 リスフラン靭帯は背側靭帯と底側靱帯の間に位置している

TMT関節を補強している靭帯で最も強力なのが中足靭帯です。この靭帯は中足骨頭の上を横に伸びており、底側と背側にあります(それぞれ、底側中足靭帯と背側中足靭帯)。また、荷重位における足底アーチ(特に横足弓)の安定化もこの靭帯の重要な機能です。横足弓はまた後脛骨筋と長腓骨筋の腱によっても補強されています。長腓骨筋は第1中足骨底に停止を持ち、ファースト・レイの重要な安定化構造です。TMT関節を補強している構造には、足根中足靭帯や足底筋膜などもあります。

運動軸

TMT関節はそれぞれの部位において運動軸が異なります。しかし、この関節における運動の殆どは第1TMT関節と第5TMT関節において起こります(※2)。第1TMT関節と第5TMT関節の運動軸は、中間楔状骨を中心にほぼ直交しています(図6)。第1TMT関節の運動軸は図にあるように傾斜しているため、背屈には必ず内反と内転が伴います。また、底屈には外反と外転が伴います。一方、第5TMT関節の可動域は第1TMT関節に比べて制限されており、運動軸は90度傾いています。こちらの関節も背屈には内反と内転、底屈には外反と外転が伴います(第3中足骨を正中面とした場合)。

図6 第1TMT関節と第5TMT関節の運動軸

第3TMT関節の運動軸は冠状面にあるため、背屈と底屈には副次的(二次的)運動は伴いません。また、第2TMT関節と第4TMT関節の運動軸については研究報告がありませんが、それぞれ第1と第3TMT関節、第4と第5TMT関節の運動軸の中間に位置すると考えられます(図7)。また、TMT関節の可動域は外側の方が大きい傾向があります(表1)(※3)。

図7 2nd, 3rd, 4th Rayの運動軸
TMT関節 可動域(°)
第1TMT関節 1.6
第2TMT関節 0.6
第3TMT関節 3.5
第4TMT関節 9.6
第5TMT関節 10.2
表1 TMT関節の可動域

足根中足関節の機能

TMT関節は前足の運動と安定性に影響を及ぼします。また、TMT関節は後足部(踵骨、距骨)や中足部(立方骨、舟状骨、楔状骨)における関節(距骨下関節、横足根関節)の代償作用が生じやすい傾向があります。

TMT関節の機能は足底アーチの形状に影響を及ぼします。特に荷重位において横足根関節、距骨下関節と協働し前足(中足骨、指節骨)の姿勢(ポジション)をコントロールしています。したがって、横足根関節や距骨下関節に可動域制限がある場合、TMT関節には代償的に捻じれが生じることで前足のポジション調整を行います。

過剰回内

荷重位において後足は回内し、横足根関節では回外が生じています。もし横足根関節に回外が生じていなければ、前足部内側により大きな負荷が加わることになり、足底アーチは扁平化します。したがって、第1TMT関節と第2TMT関節は背屈位、第4TMT関節と第5TMT関節は底屈位になります。また、これら4つのTMT関節には副次的に内旋と内転が伴っています。

捻挫などでしばしば問題となるのが、足関節の過剰回内です。この時、踵骨は外反し距骨には底屈に内転が加わります。舟状骨は距骨頭に押され下制します。また、第1、2中足骨は背屈と内旋、第4、5中足骨には底屈と内旋(+内転)が起こります(図8)。

図8 過剰回内

足関節の過剰回内は、横足根関節のロッキングを遅延させます。そして、横足根関節のロッキング遅延は中足部(楔状骨、舟状骨、立方骨)と中足骨の可動性亢進を引き起こします。さらに、長腓骨筋の機能低下により、第1TMT関節の安定性が失われます。したがって、第1TMT関節には過剰な負荷が加わるため、変性が進行しやすくなります(変形性関節症)。

過剰回外

距骨下関節と横足根関節が共に回外位でフィクセーションを起こしている場合、足根中足関節において代償作用が発生します。後足が回外位の時、前足の内側は挙上位、外側は下制位となります(重心が外側に変位)。そのため、足底部が地面との接触を維持するためには、第1、2中足骨は底屈し、第4、5中足骨は背屈しなければならなくなります。

距骨下関節の回外により、踵骨には内反が生じます。さらに、踵骨の内反は距骨の外転と背屈を生じさせます。また、舟状骨は距骨の背屈に連動するように挙上します。第1、2中足骨は底屈と外旋(+外転)、第4、5中足骨には背屈と外旋(+外転)が生じます(図9)。

図9 過剰回外

参考文献

  1. de Palma, L., Santucci, A., Sabetta, S. P., and Rapali, S: Anatomy of the Lisfranc joint complex. Foot Ankle Int., 18:356-364, 1997
  2. Hicks J: Mechanics of the foot 1: The joints. J Anat 87: 345, 1953
  3. Ouzounian TJ, Shereff MJ: In vitro determination of midfoot motion. Foot & ankle ;10:140-146,1989
  4. Peicha G, Labovitz J, Seibert FJ, Grechenig W, Weiglein A, Preidler KW, Quehenberger F: The anatomy of the joint as a risk factor for Lisfranc dislocation and fracture-dislocation AN ANATOMICAL AND RADIOLOGICAL CASE CONTROL STUDY. Journal of Bone and Joint Surgery, British Volume. Sep 1;84(7):981-5, 2002
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