新連載 アメリカのナチュロパシー 髙倉昌宏 | カイロジャーナル

  新連載 アメリカのナチュロパシー 髙倉昌宏

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新連載 アメリカのナチュロパシー 髙倉昌宏

ナチュロパスの役割と仕事
自然治癒力を引き出し、ウェルネスをはぐくむ!
カイロジャーナル87号 (2016.10.15発行)より

ナチュロパス(Naturopath)/ナチュロパシック・ドクター(Naturopathic doctor)とは、ハーブ療法、食事療法、手技療法などに代表される自然医学や自然療法を専門とする療法士/医師のことである。資格もしくは、行うことができる医療行為は、アメリカでは州ごとに異なっており、私が開業しているワシントン州の法律では、一般家庭医(Home Doctor)の資格(注)が与えられている。一般家庭医は日本で言う「かかりつけ医(一次医療機関)」のような存在で、比較的軽度な怪我や病気の治療に加え、より高度な治療が必要な場合に、患者を適切な専門医療機関に紹介する役割も担っている。検査や処方、必要な医療のレベルについても、過剰投与や無駄を抑え、医療費削減につながる仕組みだ。

ナチュロパスの診療・治療の方針として特徴的な点は、人間が元来持っている自然治癒力を促進させることだ。療法士/医師が病気を治すのではなく、患者本人が病気を治す過程を手助けする立場で治療を行う。現在発症している症状の抑制だけでなく、患者の全容を把握した上で、根本にある病気の原因を追及、治療し、精神状態も含めて総合的に治療を行う。また、予防医学に力を入れ、患者の生活習慣の改善を助け、患者の体、心、精神のケア、そして、病気について教育することが必要となる。

ナチュロパスの役割と仕事

私たち、ナチュロパスは次に挙げる6つの哲学を軸に日々診療にあたっている。

  1. 自然治癒力(The Healing Power of Nature):体の持っている本来の自然治癒力を向上させるために、それを妨げているものを取り除き、体の回復を促進させる。
  2. 原因を解明し治療する(Identify and Treat the Cause):単に症状を治療するだけでなく、病気の原因を追究し、それを治療することを第一とする。
  3. まず害をもたらさないこと (First Do No Harm):次の3つの原則を基に、患者に害を与えないようにする。
    • 患者に害をもたらす可能性のある治療法、もしくは副作用をもたらす薬の使用を最小限にする。
    • 可能な限り、副作用を避けるため、薬などでの症状の抑制は避ける。
    • 患者の治癒の過程を診察し、状況を把握した上で過剰な診断、治療を避ける。
  4. 医師は教育者でもある(Doctor as Teacher):自然医学医師は患者に自分の体のことをよく知ってもらうために、患者がわかるように、症状、原因を説明する立場でもある。
  5. すべての面から人を全体的に治療する(Treat the Whole Person):身体、心、感情、遺伝、環境、社会、その他の要因も含め、すべての面から患者を全体的に治療する。トータル・ヘルスというのは、精神的なケアも含んでいる。患者の精神面での癒しもサポートする。
  6. 予防医学 (Prevention):病気の要因、遺伝などの有無を調べ、適切な治療をする。さらに、新たな病気の予防に心がける。

最後にウェルネス(Wellness)、つまり、最善の健康状態を保ち、その状態をさらに伸ばしていくことを目標にしている。ウェルネスとは、前向きな考え方や行動をも意味している。患者がいかなる病状であっても、病気の原因もウェルネスも、体、心、精神の中にある。患者がウェルネスに気付いたとき、病気をただ治療するよりも病状をより回復させることができる。

最終的に患者の健康状態を整えられるのは、患者本人だけである。患者が何をすれば良いか、その理由は何か?などが分かるように、患者の身体の状態やその背景にある事柄、関連する身体の仕組みなどを教育し、より良い状態を継続できるよう手助けしていくことが大切である。その点で、療法士/医師として最も重要なことは、所属医療機関の質や、専門知識の量よりも、患者とどのように接するかという心構えだと考えている。患者を洗脳するような治療であってはならないし、医療をビジネスにしてもならない。私は、患者のために何ができるかを模索して、最善の治療法を探し、提供している。もちろん、必要に応じて、他医療機関との連携が欠かせない。他の医療も奨励し、自然医学で治療できない場合は、直ちに他の医療機関へ紹介し、他の医療機関と共同で総合治療を行う場合も少なくない。

次号から症例の紹介、法律の問題、アメリカの医療、シアトルマリナーズでの経験談など、ナチュロパスとしての活動を紹介していく予定である。

(注)近年、ナチュロパスの医療行為を問題視する意見も聞かれる。これは、法律の問題であり、改めて述べることとする。

髙倉昌宏(たかくら・まさひろ)
ナチュロパシック・ドクター(ND)、カイロプラクター(DC)、公認鍼灸師(LAc)、 バスティーユ大学客員教授。一般家庭医として米国シアトルで、マサ統合医療診療所、シアトル自然治癒クリニックを経営。国際キネシオテーピング協会の理事を昨年まで務め、加瀬建造会長とともに世界各地で普及活動に努めた。
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