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グットハート先生の足跡

一般矯正から踏み出せず 反射点と筋力強化を追求
カイロジャーナル85号 (2016.2.18発行)より

サブラクセイションの矯正はスペシフィックでなければならないと信じ、アジャストメントの改善に取り組んできました。その際、AK(Applied Kinesiology)の創始者であるグットハート先生.が考案したセラピローカリゼイション(TL)とチャレンジがとても役に立ちました。私はこの検査法が触診で得られた変位のあり様とその矯正の成否を確認してくれる得難い検査法であると感じています。20年ほど前のことですが、そのグットハート先生が来日してセミナーを開催してくれるということで、私は胸躍らせ先生の来日を待っていました。

セミナーの初め、先生は体の何カ所かの反射部位を刺激して筋力を強くするというAK恒例のデモンストレーションを披露してくれました。その後のことです。可動性を調べるわけでもなく、TLやチャレンジを行うわけでもなく、仰向けに寝かせたボランティアの首を回して首筋を軽く触診して頸椎部に一般(ジェネラル)矯正を左右から加えました。その後は一般矯正の胸椎部と腰椎部の矯正が続き、私はあっけにとられてただ見ているだけで、その後のセミナーで何を教えていただいたかについては記憶にありません。

何人かのDCにグットハート先生の矯正はいつもこうなのかと聞くと、セミナーと同じとの答えでした。矯正はスペシフィックでなくてはならないと信じ、先生が考案したTLとチャレンジを利用している私にはとても信じられない光景でしたが、アメリカの指導的なカイロプラクターであるグットハート先生が、なぜTLもチャレンジも使わない一般矯正なのか、落胆と疑問でしばらく考えがまとまりませんでした。長い月日が過ぎましたが、今その理由を考えてみることにしました。以下の理由は私なりに考え整理したものです。

理由その一

カイロプラクティック界では8~9割の患者さんにサブラクセイションがあるとされているようですが、私の経験では、症状の原因がサブラクセイションである患者さんの割合は2~3割程度でした。したがって、TLやチャレンジに反応する患者さんは少なく、背骨の矯正を至上とするカイロプラクターとしては利用しにくかったのかもしれません。

私はTLやチャレンジに反応しない椎骨に対して、徒手による矯正を行うべきではないと考えます。全ての治療には利益相反があり、徒手矯正にも利益と害があります。利益が害を大きく上回る時のみ行うべきで、ほぼ全ての患者さんの脊柱にスラストを加える必要性はないと思います。

理由その二

サブラクセイションが複数あるなら、どの椎骨から矯正していったらよいかは重要な判断事項です。私の経験では、指先手掌面によるTLとチャレンジは、矯正すべきタイミングの椎骨しか反応しませんでした。したがって、矯正すべき可動性が制限された椎骨のなかで、TLにもチャレンジにも反応しない椎骨があり、そのためTLとチャレンジは利用しにくかったのかもしれません。

この様なケースを治療するには、TL陽性になる椎骨を探し、その椎骨から順次チャレンジでリスティングを確認し、チャレンジ陽性になる刺激で可動性の制限された椎骨を直接法で矯正し、最後に仙腸関節の過可動性を仰臥位のブロックで安定させる方法が最も無理のない方法かと思います。

理由その三

TL陽性になる椎骨に対するAKの矯正の手順は、徒手で矯正するなら関節に緩みのない矯正姿位を作り、ドロップテーブルで矯正するなら各セクションの高さと角度を調節しTL陽性が陰性になる矯正姿位を作り、コンタクトポイントと方向を判断するため指先でチャレンジを行い、陽性になる方向に徒手または指先によるスラストを陰性になるまで加え矯正するとされています。ところが、グットハート先生がいう指先でチャレンジしても反応しないことが多くありました。私の経験では、指先ではなく木槌、アクチベーター様の器具、その他様々な刺激にのみ反応する患者さんがいました。このためTLとチャレンジを一体として利用できなかったのかもしれません。

このケースでは、患者さんがチャレンジに反応してくれる、すなわち受け入れてくれる他の刺激を探すという選択もあったのですが、先生は反応してくれない理由をスィッチング等に求め、刺激の種類を探す様な試行錯誤を行わなかったようです。指先以外の刺激でチャレンジ陽性になるなら、そのコンタクトポイントに対してその刺激によるスラストをチャレンジ陰性になるまで加え矯正します。

理由その四

私の経験では、可動性が制限されている全ての椎骨でTL陽性になる患者さんが多くいました。この様な患者さんでは、TL陰性になる矯正姿位を作ることができず、チャレンジにも反応しませんでした。この患者さんをスラストにより矯正しようとすると、たとえリスティングが正しくとも、思わぬ反応が出てしまうことがありました。おそらく、直接法で矯正すると刺激量が多過ぎて症状が出てしまったのかもしれません。この様な患者さんはスラストを利用せずに間接法で矯正すると思わぬ反応もなく矯正することができます。TLに反応しチャレンジには反応しない患者さんが多くいるため、TLとチャレンジを一体として利用できなかったのかもしれません。

ちなみにこの様なケースでの矯正の順序は、体表に磁石を乗せるとTL陽性が一カ所になりますので、その椎骨から順次間接法で矯正していきます。この際、間接法で仙腸関節の過可動性を矯正することはできませんので、最後に仰臥位のブロックで仙腸関節を安定させる必要があります。

理由その五

ここまで来てふっと頭に浮かんだのですが、そもそもグットハート先生にはサブラクセイションをスペシフィックに矯正しようとする意図がなく、脊柱のフィクセイションは一次元的にでも壊せばよいと考えていたのかもしれません。であるなら、触診で椎骨の変位のあり様を細かくいちいち決める必要もなく、TLもチャレンジも利用する必要がなかったのかもしれません。悲しいことにひょっとして、これが最もありそうな理由なのかもしれません。セミナーでは、サブラクセイションを見つけていかに矯正するかということよりも、反射点を刺激していかに筋力を強くするかということに先生の執念を感じたのですが、これは私だけの感想だったでしょうか。

サブラクセイションが原因で様々な症状に苦しんでいる患者さんには、カイロプラクティックのスペシフィックな矯正が最も有効な治療法です。それに比して、現代医学や他の治療法がこの患者さんに対して行う治療は、対症療法にならざるを得ず、後は自然治癒力に任せるほかないのが実情です。そのサブラクセイションは関節の病理的な障害ではなく機能的な障害、すなわち、動くことと体重を支えることの障害ですから、その診断にはレントゲン写真やCT等の現代医学的検査が全く役に立たず、筋力検査や触診という感覚的な検査に頼るしか方法がありません。グットハート先生はこの筋力検査においてTLやチャレンジの他、様々なテクニックを考案し、カイロプラクティック界に大きな足跡を残しました。しかし、先生ご自身は一般矯正から踏み出すことはありませんでした。もしも先生が可動性触診を極め、筋力検査を縦横に駆使してスペシフィックな矯正に挑戦していたなら、どの様なテクニックが生まれただろうかと夢想することがあります。その意味で、先生の矯正法が一般矯正であったことは、先生ご自身だけでなく、カイロプラクティック界全体にとっても悲劇としか思えません。

目崎カイロプラクティック治療室 目崎勝一
http://www13.plala.or.jp/mezaki-chiro/
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