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補完代替医療 活用のために 

専門職か手法か ランド研究所が報告書
カイロジャーナル85号 (2016.2.18発行)より

米国ランド研究所は「補完代替医療:専門職か手法か」と題する報告書を昨年末に発表した。米国の補完代替医療(CAM)は、法律に基づく免許や認可のある専門家により行われているが、業務上の裁量権よりも治療手法がクローズアップされ、医療政策に反映されている現実がある。この報告書は、CAM専門家パネルと保健政策決定者パネルのそれぞれが状況を明確化し、公的医療にCAMを有効活用するための意見をまとめたものである。研究費はカイロプラクティック医療過誤保険大手のNCMICが助成しており、カイロプラクターが中心的役割を果たして作成された。

作成にカイロプラクターが中心的役割

CAM専門家パネル業務範囲内で最大限の仕事

業務範囲と保険適応

研究対象に含まれたCAMは、鍼灸/東洋医学、カイロプラクティック、マッサージ・セラピー、ナチュロパシーで、パネルのメンバー12人全員がこの4つの専門職の大学の研究者や臨床家である。

このパネルにとっての最大の関心事は、大学教育で規定されている教育範囲(知識と技能)を最大限に生かし、許可されている業務範囲内で最大限の仕事をする環境を整えることである。現状は、許可されている業務範囲を十分に生かし切れていない。

完全な業務を妨げている現状として第一に挙げられるのが、保険適応の偏向である。例えば、評価、検査、患者マネージメントに対する保険適応がCAM臨床家と医師とでは隔たりがある。

CAM臨床家は、患者の話に医師よりも多くの時間を取ってじっくりと耳を傾け、全体的な健康状況を把握して治療する傾向が強いが、このような患者マネージメントの時間は保険に反映されないことが多い。患者の身体的、社会的活動レベルをフォローしつつマニピュレーション治療を行ったことでよりよい結果を出すことができたというカイロプラクティック臨床研究もあり、治療効果を上げるためには評価やマネージメントへの充実した保険適応が望まれる。

鍼灸/東洋医学の分野では、実施される治療に適合する保険適応項目がない場合も多い。例えば指圧は治療項目とされていないので、解決策としては、鍼治療の保険適応範囲を広くするか、指圧という新たな項目をつくる必要がある。

免許の拡充の困難さ

4つのCAMはそれぞれ違った免許、認可制度の下で医療を実践している。米国全州で免許制度が確立されているのはカイロプラクターだけである。ナチュロパスの免許制度があるのは17州のみだが、免許の業務範囲は多くの州でカイロプラクターよりも充実している。マッサージ・セラピスト、鍼灸/東洋医学師は、44州で免許または認可されている。

このような差異がある中、CAM専門職が職域を広げようとすると、医師会などの通常医療の団体からだけでなく、他のCAM専門職からも抵抗を受ける構図が生まれる。強大な力を持つ医師だけでなく、他の医療職からの反対も受けることで、現状を変革するには多くの困難が伴う。

統合医療への道

統合医療という概念は10年以上前から提唱されているが、統合を達成する手段は明確に示されていない。統合的ケアを掲げるクリニックは多くあるが、具体的なビジネス・モデルはまだ確立できていないのである。患者が満足できる、質の高い統合医療を受けるために、患者自身が主体的に選択しているのが現状だ。意識の高い患者のみがCAMを上手く活用しており、CAMという選択肢を知らない一般患者も多い。

CAMを勧めない医師も多い。どのような疾患、症状に対してCAMが役立つかを知らない、信頼できるCAMクリニックを知らないなどが主な理由である。CAMが慢性痛や全身的健康状態の向上に役立つということをもっと医師に知ってもらう必要がある。また、CAM臨床家がプライマリーケアへの関わりを強めていくためにも、他の医療に比較して優れている点を明確にすることが重要であろう。

研究

CAM分野の臨床研究は、特定の治療方法の効果に焦点を当てたものがほとんどである。特定条件を満たす患者への特定条件下での治療である。しかし、最大限の業務範囲で仕事をするという目的のためには、通常医療対カイロ、通常医療対ナチュロパシーという比較の仕方が必要である。さらに、多分野専門チームをつくる場合には、どのような組み合わせと分担が最適なのかを調査する研究も望まれる。

CAMでは、健康的なライフスタイルも組み合わせ、長期的な健康維持と増進を図るというアプローチが一般的である。このため、長期フォローアップ形の研究も進める必要がある。

保健政策決定者パネルよりよい患者ケアが最重要

3つの目標

このパネルは、より患者の健康に役立つ保健制度を策定するためにはCAMがどのように貢献できるかを明確にする目的で話し合いが持たれた。パネル・メンバーには、政策策定に関わった経験のあるCAM専門家のほか、CAMに詳しい医師、経営学専門家、保険制度専門家などが選ばれた。

CAMは次の3つの目標を持つべきと提言された。

  1. CAMの質および患者満足度をより高めていく
  2. 人々の全般的な健康度を高める
  3. ヘルスケアの費用対効果を高める。

政策決定者パネルは、CAM側は業務範囲を広げることに力を注ぐが、本当に大切なのはよりよい患者ケアであり、患者が最良のケアに行きつけるための制度をつくることであると強調した。

患者の望み

どのCAM専門家に治療してもらうかは患者にとっては重要ではない。また、各専門職のアイデンティティ確立も患者の関心事ではない。例えば鍼灸と認知行動療法の併用に効果があるのであれば、誰が行うかは問題ではないのである。患者の利益を最大限にするというアプローチで、医療制度に変革をもたらすことが重要である。

異業種統合治療

様々なCAMと通常医療が協力し、異業種がチームとして患者ケアに当たる医療が将来モデルとして提案された。プライマリーケアから、CAMを含む多面的なケアを取り入れることが望ましいとの意見もあった。

異業種チームが上手く機能するためには、医療の目的を症状の治療から、長期的な健康や予防へと転換する必要がある。そうなると、究極のプライマリーケアとはセルフケアであると言える。患者もこのチームの一員と考え、患者への適切な情報提供や患者を支える人への支援なども含めた医療が必要となってくるだろう。

今後の課題 各専門職の権限共有が課題

この報告書では、2つのパネルの視点の違いが際立つ。しかし人々の健康増進のためにCAMをより役立てる方法を確立するという目的は共有していると言えるだろう。

CAM側は、専門職の業務範囲を明確にすることで安定したポジションを得られ、確実に患者に貢献できるとの意識が強い。一方、患者や医療政策決定者は、最善の治療手法を駆使できるチーム医療という将来モデルを描いている。よりよいチーム医療の実現のために各専門職の権限はどうあるべきかを明確にし、共有していくことが今後の課題であろう。

ランド研究所
カリフォルニア州にあるシンクタンクで、軍事、情報、医療など幅広い分野の政策研究で知られる。カイロやCAMに関するエビデンス研究、政策研究も継続して行われてきた。紹介した報告書Complementary and Alternative Medicine: Professions or Modalities? はhttp://www.rand.org/でから全文をダウンロードできる。
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