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  第13回 ランニング周期

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スポーツ・カイロプラクティック 第13回 ランニング周期2015.08.03

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ランニング周期
カイロジャーナル70号(2011.2.25発行)より

歩行周期は地面に足が接地する瞬間に始まり、同側の足が地面から離れ、もう一度地面に接触する瞬間まで続きます。この瞬間を初期接地(initial contact)と呼んでいます。スタンスフェーズは、足が地面から離れた瞬間に終了します。トーオフの直後からスィングフェーズが始まります。スタンスフェーズとスィングフェーズはさらに細かいフェーズに分類されています。歩行時のスタンスフェーズは、歩行周期全体の50%以上を占めており、両足が同時に地面に接触している期間が2つ存在します。それらはスタンスフェーズの初期と終期に現れます。

歩行周期はスタンスフェーズ(stance phase:立脚相)とスィングフェーズ(swing phase:遊脚相)に分けることができます。スタンスフェーズは全体の60%から65%、スィングフェーズは全体の30%から40%程度を占めています。全歩行周期は約1秒間続き、その25%は両足が地面に接地しています。当然のことながら、歩く速度が増すにつれ、1周期にかかる時間は短縮されていきます。11一方ジョギングでは、1周期にかかる時間は0.7秒になります。両足が同時に地面に接地している時間はなくなり、逆に両足共に地面に接地していない時間が現れてきます(ダブルフロート)。



ランニング周期は、スタンスフェーズ、スィングフェーズに分けることができます。スタンスフェーズの前半では、足関節の回内が発生することで地面からの衝撃吸収を行っています。スタンスフェーズは、さらに初期接地、ミッドスタンス、トーオフに分かれます。またスィングフェーズは、初期スィング、ターミナルスィングに分かれます。

ランニングでは両足が同時に地面に接触している期間は存在しません。逆にスィングフェーズの初期と終期に両足が地面から離れている期間があります。15,16この期間をダブルフロート(Double float)と呼びます。トーオフのタイミングは走行スピードにより異なります。またスピードが増すほどスタンスフェーズの期間が短くなるため、トップスプリンターではスタンスフェーズが短くなる傾向があります。トーオフのタイミングについては、ランニング時には全周期の39%、スプリントでは36%の時点で起こることがわかっています。19ワールドクラスのスプリンターになると、トーオフは全周期の22%の時点で発生しています。14



初期接地からミッドスタンス

初期接地(踵接地またはヒールストライク)では、踵骨外側が最初に地面に接地します。このとき足関節はやや回外位になっており、1,13踵骨には、約4°の内反が生じています。5,20歩行では、ヒールストライクと同時に足関節が底屈していきますが、ランニングでは、このような足関節の底屈は起こらず、逆に背屈が生じています。12そのため、より大きな回内が生じることになります。足関節の背屈に伴い前脛骨筋には短縮性収縮が生じますが、これにより足関節の安定性が確保されています。また下腿三頭筋(腓腹筋、ヒラメ筋)には伸張性収縮が起こっています。これも足関節の安定性に大きく貢献しています。13

このフェーズでは、衝撃吸収のメカニズムが特に重要です。初期接地における衝撃吸収は、下肢の関節とその関節面、さらに筋肉の伸張性収縮の状態に影響されます。8距骨下関節(距踵関節)においても、衝撃吸収は行われます。スタンスフェーズの最初の20%において、距骨下関節では回内が生じており、それに伴い踵骨では外反、脛骨では内旋が生じています。距骨下関節が回内することにより、より効率的な衝撃吸収が行われています。また初期接地では、踵骨が地面に固定されているため、距骨に対して外転することができません。そのため、距骨下関節の回内を達成するために、距骨は内旋する必要があります。距腿関節の内旋可動性は、非常に制限されているため、距骨の内旋に伴い脛骨にも内旋が生じます。この瞬間、膝関節は屈曲位になっており、脛骨の内旋と連動しています。よって、距骨下関節の内転、距骨の内旋、脛骨の内旋、そして膝関節の屈曲は、全て連動していることになります。この連動の異常は、下肢関節の運動障害を誘発し、様々な痛みの原因となります。扁平足では、初期接地からミッドスタンスまでの時間が通常よりも長くなります。つまり距骨下関節が完全回内するまでにかかる時間が伸びています。この結果、脛骨の内旋にかかる時間も伸びます。ミッドスタンスの瞬間に膝関節は伸展し始めますが、このとき脛骨には外旋が生じています(スクリューホームメカニズム)。しかし、この時点で脛骨の内旋が起こっていたと過程した場合、その代償作用として大腿骨が過剰に内旋しなければなりません。それによって、脛骨に対する大腿骨の相対的な位置関係を内旋位に保とうとするわけです。このように大腿骨が過剰に内旋することにより、膝蓋骨(膝蓋大腿関節)には運動障害が発生します。膝蓋大腿関節の関節面の一部には、過剰な圧迫力が加わるため、運動時には大きな摩擦が発生するようになります。これは膝痛の原因になり得ます。膝蓋大腿関節の運動障害が慢性化すると、関節面の摩耗が起こり、変形性膝関節症候群へと発展していきます。

ミッドスタンスからヒールオフ

このフェーズにおいて、距骨下関節は最大回内に到達します。これはスタンスフェーズにおける衝撃吸収が終了したことを示しています。回内は後脛骨筋と下腿三頭筋の伸張性収縮によってコントロールされています。2,18また膝関節においては、大腿四頭筋とハムストリングの共縮が起こっています。距骨下関節が最大回内に到達した後は、回外運動が始まります。6このとき、脛骨には外旋、踵骨では内反が発生しています。

ヒールオフからトーオフ

ヒールオフ(踵が地面から離れる瞬間)では、前足が地面に固定されています。このとき、足関節では底屈が生じます。また距骨下関節の回外もヒールオフと同時に始まり、トーオフまで続きます。距骨下関節の回外は、脛骨の外旋によって促されます。また下腿三頭筋の収縮により踵骨の内反が起こりますが、これも距骨下関節の回外を助けています。中足趾節関節における伸展も距骨下関節の回外と連動します。この関節が伸展することにより、足底筋膜の伸張が促され、横足根関節の安定性が増します(Windlassメカニズム)。また横足根関節を交差している足の内在筋(母趾外転筋、短母趾屈筋、小趾外転筋、短趾屈筋)によっても、この関節の安定性が保たれています。7

このフェーズにおいて、地面からの反力がもっとも大きくなるのは、トーオフの瞬間です。このときの反力は、ランニング時には体重の2.8倍、歩行時には1.3倍にもなります。3,4下腿三頭筋の短縮性収縮はトーオフまで続きますが、そのあとは前脛骨筋が機能し始めます。ハムストリングは、膝関節の安定化筋から股関節の伸展筋の役割へと切り替わります。また大腿直筋は、トーオフの直前から収縮し始めます。

初期スィング

トーオフの後にこのフェーズになります。浮遊している側の下肢の膝関節は屈曲位になります。このとき大腿直筋の伸張性収縮が起こっています。また股関節では、大腿直筋と協働して腸腰筋の短縮性収縮が起こります。17フロートフェーズの後、反対側の下肢が地面に着地しますが、このとき股関節の外転筋(中殿筋、小殿筋)が強く緊張し、股関節を安定化させています。浮遊側下肢の股関節に屈曲が生じると、骨盤は回旋します。このとき、同側股関節には、相対的に外旋が生じていることになります。また反対側股関節には内旋が生じるため、このとき反対側内転筋群の短縮性収縮が生じています。体幹にも捻じれが生じているため、同側の外腹斜筋、反対側の内腹斜筋の短縮性収縮も起こります。つまり、骨盤の回旋に伴う内転筋群の収縮、さらに反対側外腹斜筋の収縮は連動します。この機能解剖学的な結合をAnterior Oblique Slingと言います(図1)。前脛骨筋は、スィングフェーズを通して収縮している筋肉です。17前脛骨筋が収縮することにより、足関節は背屈位で保持されます。それにより、歩行やランニング時において、躓くことなく前進することが可能になります。

図1

ターミナルスィング

反対側の下肢がトーオフした後から、ターミナルスィングが始まります。股関節は最大屈曲に到達した後であり、ここからは伸展に転じます。このとき、ハムストリングと大殿筋の短縮性収縮が起こります。17同時に大腿直筋の収縮に伴い、膝関節の伸展も起こりますが、初期接地の直前では、ハムストリングの伸張性収縮により、膝関節が伸展するのを制限します。17ターミナルスィングでは、股関節は内転します。股関節の内転筋は、短縮性収縮を起こし、大腿骨を内転させます。初期接地の直前になると、下腿三頭筋の収縮が始まります。前脛骨筋はフロートフェーズを通して収縮が持続され、スタンスフェーズの一部まで収縮は維持されます。6初期接地では、前脛骨筋と下腿三頭筋が共縮することにより、足関節の安定性に貢献しています。5

筋活動

歩行時またはランニング時における下肢筋肉の活動については、さまざまな研究が今までなされてきました。9,10,16,17一般的にもっとも筋活動が活発になるのは、踵の後外側が地面に接地した瞬間(初期接地)です。足関節の捻挫などのスポーツ障害は、このタイミングで発生することが多いため、この瞬間の筋収縮は重要となります。

» 大腿直筋/大腿四頭筋

大腿直筋と大腿四頭筋はともに終期スィングからスタンスフェーズ中期(Midstance)にかけて筋収縮が起こります。このタイミングで筋収縮が生じることで、このあとに続くヒールコンタクトにおける衝撃吸収に備えることができます。大腿四頭筋の筋活動は初期接地の78ms前に発生しています。また大腿直筋はスタンスフェーズ中期において活発に活動しています。スタンスフェーズ中期では膝関節の屈曲が起こるため脛骨には後方への力が加わります。しかし大腿直筋が緊張することにより、脛骨の後方変位を防いでいることになります。また大腿直筋は二関節筋であることから、エネルギーの伝達の役目も担っていると考えられます。

» ハムストリング/股関節伸展筋/腓腹筋

これら三つの筋肉は、全て似たような筋活動をしています。ハムストリングと股関節伸展筋は、スィングフェーズ後半からスタンスフェーズ前半にかけて、股関節を伸展させています。ハムストリングはまた、初期接地の直前において伸張性収縮を起こします。これにより膝関節伸展のコントロールをしています。また大腿直筋と同様、ハムストリングも二関節筋であるため、エネルギー伝達の機能を持つと考えられます。

» 前脛骨筋

前脛骨筋の機能は足関節の背屈です。スィングフェーズにおいて短縮性収縮が発生しています。それにより、初期接地において後足(踵骨)が地面に接地することができます。またスタンスフェーズの初期においては、伸張性収縮を起こすことで前足の動きをコントロールしています。

参考文献
  1. Bates BT, Osternig LR, Mason B: Lower extremity function during the support phase of running. Biomechanics VI 31-39,1978
  2. Burdett RG: Forces predicted at the ankle during running. Med Sci Sports Exerc ;14:308?16,1982
  3. Cavanagh PR: Forces and pressures between the foot and floor during normal walking and running. Proceedings of the Biomechanics Symposium. Indianapolis (IN): Indiana University; 172?90,1980
  4. Cavanagh PR, Lafortune MA: Ground reaction forces in distance running. J Biomech; 13:397?406,1980
  5. Cavanagh PR: The shoe-ground interface in running. American Academy of Orthopaedic Surgeons Symposium on the Foot and Leg in Running Sports. St. Louis (MO): Mosby; 30?44,1982
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  11. Mann RA, Hagy J: Biomechanics of walking, running and sprinting. Am J Sports Med. 8:345,1980
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  18. Perry J: Anatomy and biomechanics of the hindfoot. Clin Orthop Relat Res ;177:9?15,1983
  19. TF Novacheck: The biomechanics of running. Gait & Posture 7:77-95,1998
  20. Williams KR: Biomechanics of running. Exerc Sport Sci Rev ;13:389?441,1985

榊原直樹, DC, DACBSP®, ICSSD, CSCS
Cleveland Chiropractic College卒

スポーツ医学&カイロプラクティック研究所

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スポーツ・カイロプラクティック学位(DACBSP)
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