その症状 食生活に原因? 【上】 目崎勝一 | カイロジャーナル

  その症状 食生活に原因? 【上】 目崎勝一

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その症状 食生活に原因? 【上】 目崎勝一


カイロジャーナル83号 (2015.6.28発行)より

めさき・かついち
目崎カイロプラクティック治療室院長。著書『臨床カイロプラクティック』(科学新聞社刊)、訳書『頭蓋仙骨治療Ⅰ、Ⅱ』(ジョン・アプレジャー著、スカイイースト刊)他。1982 年に開業し、サブラクセイションの除去と食養を柱とした治療を行っている。
著者ホームページ http://www13.plala.or.jp/mezaki-chiro/ では、臨床に関連する生活習慣や食養に関する情報を掲載している。

患者さんが腰痛、膝痛を訴えて来室し、いざ検査してもサブラクセイションが見つからない時、皆さんならどうしますか。自分がサブラクセイションを見落としてしまったのかと何度も検査を繰り返し、分らないうちに脊柱にルーティンの様にスラストを加え、結果が思わしくなく、アジャストメントが間違っていたのかとあれこれ悩んだ経験はないでしょうか。

それはひょっとしてサブラクセイションが原因ではなく、生活習慣、特に食生活に原因があったのかもしれません。今回は骨と大豆とコーヒーと海藻に密接な関係があることを示す症例を3回シリーズで紹介しようと思います。

大豆イソフラボンはエストロゲンの代用になるのか
「常識と正反対」大豆制限で膝痛改善

高齢者、特に閉経後の女性の骨吸収を亢進させる原因は、低エストロゲン状態でのカルシウム不足といわれています。食欲不振によりカルシウム、タンパク質、ナトリウム、ビタミンKやAが不足し、日照不足によりビタミンDが不足することにより、二次的な副甲状腺機能亢進を引き起こし、さらに骨吸収の亢進を招いてしまうといわれています。この様な状態において、大豆に含まれるエストロゲンに似た構造のイソフラボンを摂取することは、骨粗鬆症の予防になると考えられ、意識して多く摂るよう推奨されてきました。しかし、今回は今までの常識と正反対の作用が現れたケースを紹介しようと思います。

症例

60歳、女性。福祉関係の仕事をしています。昨年夏、右膝痛で整形外科に通い、ヒアルロン酸を注射してもらい症状は軽減しました。今年2月より左膝に違和感を覚え、3月に走ろうとしてガクッとして以来、左膝内側痛とふくらはぎの筋肉痛のため歩行ができなくなりました。再度整形外科にてヒアルロン酸の注射を受けましたが全く改善せず、1カ月近く仕事や日常生活で短い距離でもタクシーに頼る生活を送っていました。その他に、左第4指がむくみのため手を握ることができない状態でした。ところが健康診断の検査では全てA評価、異常値はありませんでした。

触診と筋力検査の結果

触診では、頭蓋骨、脊柱、骨盤、四肢に可動性が制限されている部位はありませんでした。筋力検査では、手掌面で左膝、左手首にセラピローカリゼーション(TL)しても陰性で、膝と手首の関節を矯正すべき徴候はありませんでした。カルシウム不足を示唆する骨棒によるTLは陽性になりましたが、他の内科的な疾患を示唆するTLは全て陰性になりました。このTL陽性は骨粗鬆症・骨代謝改善薬のエビスタ錠を体表に乗せると陰性になりました。エビスタ錠はエストロゲン様の効果を発揮し、閉経後の骨吸収の亢進を抑制し、骨粗鬆症に対する治療効果を示す錠剤です。この現象はこの患者さんにエビスタ錠が有効に作用する病態があることを意味しています。ただ、患者さんの指をエビスタ錠に触れてもらい検査すると陽性になりますので、有効だからといって医師に処方してもらい服用を推薦することはできませんでした。カルシウム剤を体表に乗せて検査すると骨棒によるTL陽性は陰性になりましたが、エビスタ錠同様、指を触れてもらうと陽性になるので服用を推薦することはできませんでした。

次に、全ての食品サンプルを左膝にあてて筋力検査をすると、大豆のみが陽性になりました。この患者さんは健康に良かれと思い意識して豆乳、豆腐、納豆を食べていたとのことです。以上の検査結果から、この患者さんは全体的には健康ですが、骨粗鬆症のため膝痛になったと推定しました。

治療

膝、手首を含む症状のあるどの関節でも手掌面によるTLが陽性になりませんでしたので、矯正すべき関節はありませんでした。なぜ健康食品と考えられている大豆がいけないのか分らなかったのですが、治療はカルシウムを大豆以外の食品から意識して多く摂るように言い、全ての大豆製品を食べないように指導しました。

経過

1カ月後、歩行に不自由はなくなりましたが、階段の下りでまだ痛みがあるとのことです。筋力検査では、初診時陽性だった骨棒によるTL陽性が全ての部位で陰性になっていました。手掌面によるTLでは両膝と手首のみでTLが陽性になりました。触診では、初診時と同じく頭蓋骨、脊柱、骨盤に可動性が制限されている部位はありませんでしたが、両膝、左手首と指のみ可動性が制限されていましたので矯正しました。矯正直後に手を握れるようになり、軽くステップを踏めるようになりました。さらに1カ月後、階段の下りはまだ少し痛いとのことでした。触診では、両膝の可動性が制限されているのみでした。筋力検査では、手掌面によるTLが両膝のみ陽性になりましたので矯正しました。

この患者さんは現在仕事に復帰し以前の生活に戻っています。健康であるにもかかわらず、もう仕事は続けられないと思っていたそうです。もしも大豆を制限していなかったなら、1年もしないうちにご自身が障害者になるところでした。老齢化社会になり、老老介護が避けられない現状を考えると、誰もが働ける限り働くという環境を整える必要があり、そこにカイロプラクティックは貢献でできると思った次第です。

考察

全ての食品のなかで大豆だけが筋力検査陽性になる患者さんは初めてでした。それも関節部においてのみTL陽性になりました。私の経験では、骨粗鬆症の患者さんの関節には可動性があり、一般にいきなり矯正することはできませんでした。この患者さんでは大豆を1カ月制限することにより、膝の可動性が制限されるようになり、骨棒によるTL陽性が陰性になり、手掌面によるTLが陽性になったことで、膝を矯正することができるようになりました。

この骨と大豆の通説に反する現象を不思議に思い、この現象を説明する文献がどこかにないものかとあちこち探していると、MFホリックBドーソン・ヒューズ編集『骨の健康と栄養科学大辞典』(西村書店)317ページに「エストロゲンと植物性のエストロゲン(イソフラボン)の重要な違いは、標的組織によってエストロゲンの作用とは異なる拮抗薬または作動薬作用を発揮することである」とありました。ただ同書でも植物性エストロゲンの骨に対するイソフラボンの有効性を謳う記述が多くあり、私の経験は通説に反するようです。

2年ほど前にこの大豆の作用に気づいてから、同じ反応を示す患者さんが男性も含め30人以上いました。読者の治療室で骨棒によるTLが陽性になる骨粗鬆症を疑われる患者さんがいましたら、カルシウムの補給だけでなく、大豆サンプルで患部にTLして陽性になるか試してみてください。
(次回は骨とコーヒーの関係です。)

患者さんか骨棒で右膝に触れるTL
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