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JSCC基調講演で脳振盪を解説


カイロジャーナル83号 (2015.6.28発行)より

成相 直先生インタビュー

4月20日、東京医科歯科大学に成相 直(なりあい・ただし)先生(脳神経機能外科准教授)を、JSCC元副会長の大場弘が訪ね、お話をお聴きしました。


基調講演者の成相直准教授(研究室にて)

(大場)今度の学術大会での講演をご快諾いただき、光栄に思っております。カイロジャーナルという業界紙で成相先生をご紹介させていただきたく、お話を伺いに参りました。

(成相)カイロプラクティックというと整体のようなことですか。

(大場)カイロプラクティックはアメリカが発祥なのですが、アメリカという新しい国では伝統的な民間医療がなかったので、カイロとかオステオパシーという代替医療が発展してきました。現在、医療を補完するかなり高度なものになっています。

日本では制度化されたものではないので、いろいろな方々がカイロと称してやっている状況です。柔整とか鍼灸という免許を持っている方もいます。

成相先生には脳振盪のお話をしていただける予定ですが、脳振盪というと私の教わった先生が脳振盪の治療でかなり有名になっています。選手生命が危ぶまれていたアイスホッケーの超有名な選手を復帰させたのですが、彼の活躍があってこの前のオリンピックで優勝をしていました。

(成相)なんという選手ですか? 20数年前に私もアメリカに住んでいたことがあったので、北米のプロアイスホッケーはよくテレビで観ていました。なにか講演で使えるネタがあるとありがたいですね。

(大場)すみません、今名前が出てこないので、記者会見の様子を撮った動画を、後でメールさせてもらいます。(そのプレーヤーはプロ・アイスホッケーリーグ・NHLのピッツバーグ・ペンギンズのキャプテン、シドニー・クロスビー選手。インタビューの場で度忘れしました=後記)

(成相)アメリカではNFL(プロ・アメフトリーグ)が大きな資金を提供して研究も行われていて論文もかなり多く出ています。啓蒙活動も盛んに行われたおかげで脳振盪による障害もかなり少なくなってきています。

講演では、何か実際のスポーツでの事例を示せると良いと思っています。

脳振盪と出血

(大場)成相先生は、もやもや病などの脳血管外科の専門とお聞きしているのですが、脳の血管障害を専門に診られているのですか。

(成相)もやもや病は私の専門で日本でも一番多く患者さんを診ている一人ですが、他の血管障害や、腫瘍、外傷も診療しています。私はもともとの研究がPETとかMRIなどの機能画像診断からスタートしました。そうしたことから脳血管傷害にも関わっているし、腫瘍にも関わっているし、それに外傷にも関わっているので、外傷の場合でも最新の画像のことで研究論文を書くことが多いのです。

(大場)脳振盪になったときには微小でも脳の血管傷害があって出血が起きているのでしょうか。

(成相)頭を打った後に頭痛がするとか意識障害が無いために、一般には軽度と思われるようなスポーツ外傷でも出血を伴うことはあります。それを見逃さないように注意しましょうと、脳外科学会とか臨床スポーツ医学学会を通して啓蒙しています。

(大場)血が出てそれが貯まっているということになると大変ですね。

(成相)脳振盪を起こして回復はしているのに、それでもちょっと調子が悪いという人を調べると、ちょっとだけ血管に傷ついて血が出ているということがそれなりの数で出てきます。それに気づかないで復帰させたりトレーニングを再開させたりすると、調子が悪いところに二回目のヒット(衝撃)を受け、大出血を起こして死亡するということが現実にあるのです。そういった経過をたどる例があることが1990年代から分かってきていて、事例も多く集められ脳外科でスポーツ傷害に関わっている医師にはかなりその知識が広まりました。しかしまだ社会への啓蒙が必要です。

症状の原因探求

(大場)私が相談を受けた子なのですが、事故で背部を強打し、頭部にも衝撃があったようで頭蓋の縫合が離れていたと病院で言われたそうなのです。事故から半年以上経っているのですが、やはり頭痛があるというのです。それで学校に行けない状態が続いているという中学生の子です。

(成相)半年以上経っていて症状があるというのは、最近関連づけられるのはどっちかというと脳脊髄減少症でしょうかね。脳振盪で問題になるのは、もうちょっと受傷してからのスパンが短いときでしょうね。一カ月以内とか。その間にまた強い衝撃を受けて死亡するということが起こりかねないということです。さらにアメフトとか、アイスホッケーとかコンタクトスポーツが盛んになっているところでは、すぐに命に関わるというほどではないのですが、そうしたヒットを何度も繰り返すことで認知障害になってしまうといった慢性外傷性脳症がクローズアップされています。典型的なのは、ボクサー脳症として日本でも昔から知られているものです。

(大場)フットボールなどのスポーツ以外では、アメリカでは、戦争による後遺症もありますね。

(成相)そうそう、爆風傷害もそうですね。

精神的な気の病なのか、本当に脳の傷害で起きていることなのか区別するといったときに、画像が非常に役立つのです。

(大場)神経学的な徴候はどうでしょうか。

(成相)それは何が起こっても不思議がなくて、若年性のアルツハイマーなんかと区別ができないのです。ですから、怪我によるものなのか、進行性の病気なのか区別するためには、今月の学術雑誌にちょうどその範疇の症例がPET画像で判別できるという論文が出ていましたが、画像診断が重要になるのです。
講演

では二点で話したいと思っているのですが、一つは短期間で再度ヒットを受けて死亡にいたるようなことを防ぎましょうということと、ヒットをくり返し受けることで認知障害にいたるようなことに注意しましょうということです。

(大場)注意を喚起しましょうということですね。

(成相)特に前者の場合は啓蒙活動に力を入れており、脳振盪十箇条というガイドブックも書きましたし、学会の指針もまとまってきたと思います。実際に、柔道とかで死亡事故につながるようなことが本当に少なくなってきているようです。

(大場)一度ならずとも二度も頭を打つようなことはあってはなりませんよね。

私が相談を受けた半年以上経っている子は、意気消沈したように集中力もなくなって、学校に行けるようになっても時間が経つとバッテリーが切れてしまうような感じなのです。

(成相)そうした状態の場合でも研究的な画像で見いだせることもあるのですが、まだ研究開発途上のものと、明らかにそうだとはっきりと言えるものと二つあるのですが、調子が悪いという人たちの中で、怪我によって脳の一部が傷ついているかどうかを知るためには、保険診療では分からないけれど、研究段階でやられている最新のことをやると分かるということも確かにあります。

グリア細胞の重要性

(大場)神経細胞だけでなく、その何十倍もあるグリア細胞にも衝撃があるのではないかと思っているのですが。グリア細胞は神経細胞に栄養補給したり、支持構造になっていたり、免疫的な働きをするものもありますし、非常に大事ではないかと思っているのですが。

(成相)まさに私もそう思っています。二次障害というところで、機能的にはグリア細胞に関わってくることは大きいと思いますし、イメージングということで実験的にやっているところです。

この話題をメインに脳外科カンフェレンスで話そうと思っているのですが、ただ、どのくらいまでみなさんの学会で話したらいいのか、どのくらい理解してもらえるか分からないので……。

(大場)私たちの臨床では、やはりお医者さんが診ていてどうしても分からないといった不定愁訴も多いのです。最新の研究から何かヒントになることはないかと、めざといことに聴き耳を立てる会員が多くて。よく突っつかれるものですから。

(成相)そうですか、一足飛びに放射線同位元素を使ったイメージングで診るといったことはできないのですが、まあMRIのいろいろな撮り方で観ると分かるようなこともありますから、そうしたものを紹介できるかも知れませんね。

集中できない、勉強ができないという人の様々な原因は、まさに今、私が考えているテーマになるかも知れません。

(大場)そうしたお話があれば大変ありがたいことです。

お忙しい中、本日は本当にありがとうございました。学会ではまたお世話になりますが、よろしくお願いします。

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