関連痛と神経障害性の痛みをどう見分けるか | カイロジャーナル

  関連痛と神経障害性の痛みをどう見分けるか

カイロプラクティック、オステオパシー、手技療法の最新情報、セミナー案内、関連書籍・DVDの販売

カイロジャーナル TEL.03-3434-4236 〒105-0013 東京都港区浜松町1-2-13江口ビル別館

痛み学NOTE <第38回>関連痛と神経障害性の痛みをどう見分けるか2014.02.22

カイロジャーナル79号 (2014.2.22発行)より

これまでに述べたように「小殿筋トリガーポイント(TrP)は坐骨神経痛だと嘘をついている」ことがある。これは筋筋膜性疼痛症候群(MPS)とされ、体性関連痛の範疇に入る病態である。ところが、その体性関連痛のメカニズムとなると、その機序は決して明らかとは言えない。筋膜痛や線維筋痛症のような筋肉に起因する病態には複雑な病態生理学があり、その研究解明は後れを取っているのが現状のようだ。

腰下肢痛はカイロプラクティックの臨床の現場でもよく見られる症状である。厄介なことに、痛みを訴えている部位が必ずしも治療部位とは限らないことが多く、この問題は本当にややこしい。かつて腰下肢痛と言えば、すなわち神経の圧迫や絞扼と相場が決まっていた。つまりは「根性痛」とみなしていたのである。不思議なことに、圧迫された神経根部で「感覚神経だけが障害され運動神経には影響が及ばない」とされていることにも、疑問を消し去ることはできない。

それでも「後根神経節(DRG)の感受性は過敏である」を根拠に説明づけられている。しかし、どう考えても侵害部位から逆行性に痛みが伝達される仕組みは理解できない。だから根性痛は「異所性興奮」という神経障害モデルで説明せざるを得ないのだろう。こうした神経障害に伴う痛みには中枢性と末梢性があり、病態生理学的には「5つの基本的機序」(「痛み学―臨床のためのテキスト」409頁)が提示されている。

それによると、

  1. 痛みに感受性のあるニューロンへの直接の刺激、
  2. 損傷された神経の自発発火、
  3. 中枢神経系の感作と求心路遮断による神経系の再構築、
  4. 内因性の疼痛抑制系の破綻、
  5. 交感神経依存性疼痛

の5つで、この基本的機序が単独あるいは複合して痛覚伝導系が障害されて発症するとしている。多様な発症機序ではあるが、症状には類似点があるようだ。

それは、次の3つの症状に要約されている。

  1. 灼けつくような、突き刺すような痛み、
  2. 発作性あるいは間欠性の痛み、
  3. 感覚変容(触刺激に過敏、冷刺激に対する灼けつくような感覚、無感覚部痛)

の3症状で、発汗過多、皮膚温の変化、萎縮性変化(爪、皮膚、筋、骨など萎縮)が見られることもある、とされている。

これらは病態モデルを使った動物実験でも明らかである。あるいは広作動域ニューロンから下肢痛として脳に投射された痛みということもあり得るだろう。広作動域ニューロンが感作あるいは反応性が亢進すると、非侵害性の刺激(温熱や触刺激)でも痛みが生じるようになる。このことは正常な組織に対する刺激によっても痛みを誘発するという病態を意味している。

だとすれば、神経障害性の痛みは必ずしも痛み症状だけとは限らないとみるべきだろう。おそらく異常な感覚の変容が伴うはずである。あるいは痛みは一過性の強力なもので、まもなく異常感覚や神経麻痺症状が起こるかもしれない。

そう考えると、純粋に末梢への痛みだけが訴えられているケースでは、関連痛を想定して治療対応することが賢明であろうと思う。関連痛と神経障害性疼痛とでは、圧倒的に筋・筋膜障害による関連痛が多いのである。このことは徒手療法の臨床現場で、特に感じることでもある。

それでも、時には神経障害性の痛みが紛れ込んでいることがある。それらは徒手療法に対する応答が治療後の変化として見えにくい。こうした難治性の痛みには代償性の体性関連痛が混在しているケースがある。この混在した体性関連痛を上手にリリースすると、意味のある軽減として感ずることがある。しかし、背景にある神経原性の痛みは難治である。煎じ詰めて言えば、神経障害性疼痛には特徴的な痛みに加えて、「感覚変容」や「交感神経性反射症状」が伴うと言ってもいい。

したがって、痛み単独の症状は「神経障害性疼痛」ではあり得ないとみるべきだろう。トリガーポイントが特定できれば、関連痛であることはより確実になる。

それでも、「感覚変容」と混乱しやすいのが「しびれ」感である。だから、「しびれ」を訴えられると悩まされる。でも上記の特徴に照らすと、患者さん自身が「しびれ感」の自覚的な「異常感覚」を感じているのか、それとも第三者からの皮膚刺激で認識できる「感覚障害」なのかを見分けることで判別しやすい。第三者からの刺激により、感覚の消失あるいは過敏があれば「感覚変容」とみることができる。

神経障害性疼痛には、代償性のMPSが混在することが多い。これもMPSに対応することで早期に症状の軽減が期待できるだろう。やっかいなことにMPSにも「しびれ感」や「麻痺」と思われる症状が随伴することがあるからだ。明らかな神経障害は別にして、先ずは筋・筋膜への対応を第一に取り組むべきであろうと思う。


facebook公式ページへのリンク

長期連載中の記事

過去の連載記事