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カイロジャーナル77号

  • 第15回は東京で11月開催 期待の講演 飛躍の糧に
  • 訃報 頭蓋仙骨治療の巨匠、アプレジャーDO死去
  • 訃報 腰痛エクササイズに革命をもたらしたマッケンジー氏、死去 
  • WFC世界大会、アフリカで初めて開催
  • カリフォルニアで法案合戦
  • 「腰痛への新しいアプローチ」 ジェイコブDCインタビュー


徒手医学会学術大会

東京で開催

今年で15回目を迎える徒手医学会(JSCC、中川貴雄会長)学術大会は、11月に東京で開催される。大会長は、これまで何度も学術大会で研究発表を重ねてきた山梨県在住の吉岡一貴氏(よしおかカイロプラクティック研究所院長)。「徒手療法の役割」という堅実なテーマで、日本の社会制度の中での治療家の立場を踏まえ、新たな飛躍に役立つ最新研究を含む講演やパネルディスカッションが盛り込まれている。

昨年は9月に開催された徒手医学会だが、今年の日程は秋も深まる11月の第2週、9日(土)、10日(日)である。これまで東京開催では何度も使われた品川区の公共施設「きゅりあん」が会場で、経済性、利便性の点とも申し分ない。

基調講演には「マッサージの際に秒速何センチで動かすのが最も効果的か」などの研究でテレビでも話題となった山口創准教授(桜美林大学心理・教育学系)が行う。講演テーマは「皮膚と心~「第三の脳」としての皮膚の役割」である。

特別講演は「生体のゆらぎとその役割」をテーマに、山本義春教授(東京大学大学院教育学研究科)が行う。生体調節系のゆらぎは、かつては少ないほど安定していてよいと考えられてきたが、ゆらぎが大きい方が調節系が活性化されるし、より健康的な場合もあることがわかってきた。ゆらぎの積極的な意味と機能について、最先端の研究が紹介される。

ワークショップは、米国カイロプラクティック神経学学位であるNACNBを持ち、カリフォルニア州で開業する吉沢公二DCが担当する。二日連続で、計三時間半たっぷりとカイロ神経学の講義を聴講することができる。カイロ神経学は、多くの臨床家が強い関心を寄せている分野だが、臨床機能神経学に基づく検査法や子供の発達障害の臨床など、実際の臨床についての話が聞ける貴重な機会となるだろう。

今回は、これまで何かにつけてJSCCの牽引役を引き受けてきた馬場信年氏、守屋徹氏、大場弘氏の3人による「臨床の落とし穴」と題するパネルディスカッションの企画もある。長年の臨床経験に基づき、特に安全な臨床ということに焦点を当てて、症例をもとに様々な情報を共有する。これに関連し、禁忌症についてまとめた配布資料も準備する予定である。

 

脊椎外科専門医の穴吹弘毅医師が徒手医学会に100万円寄付

日本脊椎脊髄病学会認定 の脊椎脊髄外科指導医で穴吹整形外科クリニック(静岡県裾野市)院長の穴吹弘毅医師が、徒手医学会に100万円の寄付をした。穴吹医師は、脊椎専門医として最先端技術の手術をこなす一方で、カイロプラクティックや徒手医学に対する理解も深く、クリニックではカイロプラクターや鍼灸師による自費治療も提供している。

2005年には「椎間板ヘルニアに対するマッケンジー・エクササイズの効果」と題する研究をJSCC学術大会と学会誌に発表した。この研究は翌年最優秀論文賞を受賞した。

今年の大会長である吉岡一貴氏は、穴吹医師が開業した当初から同クリニックに週1回通い、臨床に携わっている。
「私はカイロプラクティックに大きな期待をしています。手術適応ではないけれども、薬などでは治らない患者さんも多く、日常診療で欠かせないものです。今回は大会長が吉岡先生ですし、今までに、中川先生、大場先生、その他多くのカイロプラクターの先生方にもお世話になりました。これまでのお礼の気持ちです」と本紙の取材に対し、期待と感謝を込めた寄付であると語ってくれた。

徒手医学会では、今回の寄付の一部を会員増強のために使う予定である。日本で開業しているDC学位を持つカイロプラクターや、長年カイロに携わりながらまだ学会活動に参加していない臨床家などを今秋の学術大会に招待する費用にあて、学会活動を知ってもらい、参加を促したいとしている。


訃報

頭蓋仙骨治療の巨匠、アプレジャーDO死去

頭蓋仙骨治療(CST)を世界に紹介したオステオパス、ジョン・アプレジャーDOが昨年10月26日にフロリダ州の自宅で死去した。80歳だった。次世代の革新者としてタイム誌に取り上げられるなど、代替医療の先駆者として注目を浴び続け、多くのCST施術者を育てた巨匠だった。

アプレジャーDOは、カークスビルのオステオパシー学校を卒業後、外科手術も行う通常のオステオパスとして開業した。1970年代に、患者の首の手術に立ち会い、硬膜のリズミカルな動きを観察したことがきっかけとなり、頭蓋マニピュレーションの臨床研究の道を切り開き、深めていった。そして頭蓋骨は乳幼児期には動くが成人では動かないという広く信じられている説の間違いを確信し、数々の難しい症例で成果を上げていった。そして、解剖学者、生理学者、人体工学専門家、臨床家など、幅広い分野からなる研究チームをミシガン州立大学のオステオパシー医学部で立ち上げた。彼らの研究で、頭蓋骨の持つ独自の周波数と動きのパターンが明らかにされた。この結果をもとに頭蓋仙骨システムの圧調節機能モデルを提唱した。

頭蓋仙骨のテクニックは、サザーランドDOにより発見発明されたもので、その後何人ものオステオパスにより発展してきたものであり、アプレジャーは独自性を主張し過ぎていると批判されることもあった。また、オステオパスまたは医療専門資格のない人へテクニックを普及したことも容認できないという意見がある。しかし、アプレジャーDOは、自身の診断治療のテクニックは、ほとんど独自で開発したものであると語っている。また、現在では一般的に使われるようになった頭蓋仙骨治療(CranioSacral Therapy=CST)という言葉自体も彼が初めてつくったものである。

より多くの人にCSTを教え、多くの患者を助けることをモットーに、彼は1985年に国際アプレジャー協会を設立した。協会は息子のジョン・マシュー・アプレジャー氏が引き継ぎ、教育活動とクリニックの運営が継続している。教育は主にセミナー形式で行われており、これまで世界60カ国以上で10万人を超える人がCSTセミナーを受講した。

多くの人に指示されたのは治療のみならず人としての魅力もあったのだろう。若い頃はジャズピアニストになろうとしたほどのピアノの腕前で、受講者たちとの交流でピアノを演奏したこともあったという。テクニックの指導で「リズムを感じなさい」ともアドバイスしていた。

同協会のクリニックでは、難しい症例に対処するために、プールの中でイルカのサポートを借りたり、多人数のセラピストのハンドタッチを用いるなど、既存の医療では考えられないクリエイティブな手法も用いて患者の治療に当たった。これらの特殊なCST は、今も引き継がれ、実践されている。

多くの難病者を助けたアプレジャーDOだが、晩年は病に倒れ、病床生活を余儀なくされた。亡くなった2カ月後、改めて追悼式が開かれ、アプレジャーから学び、影響を受けた多くのセラピストと患者たちが巨匠の死を悼んだ。

腰痛エクササイズに革命をもたらしたマッケンジー氏、死去

自分でできる腰痛の治療と予防の体操法の発明者として世界的に知られる理学療法士、ロビン・マッケンジー氏が5月13日、82歳の生涯を閉じた。日本ではマッケンジー氏の手法は「マッケンジー・エクササイズ」として、アメリカのカイロプラクター、ゲリー・ジェイコブDCにより15年ほど前に初めて紹介された。ジェイコブDCは、その後もマッケンジー氏の「自分で治す」のコンセプトを中心に置いた診断と治療を実践しており、日本でのセミナーも行っているため、日本のカイロプラクターの間でも、マッケンジー・メソッドを知る人は少なくない。

マッケンジー氏は、1931年、ニュージランド生まれ。患者自身が主体となって、筋骨格系の痛みを治すという、診断と治療手法を確立し、82年にマッケンジー協会を設立した。この手法は世界的に認められ、現在では全世界に支部が28カ所ある。日本にも「マッケンジー協会日本支部」があり、世界統一のマッケンジー法(MDT)講習会の開催とマッケンジー・セラピストの認定試験が行われている。

マッケンジー・エクササイズでは、かつては腰痛には禁忌とさえ思われていた伸展運動を積極的に行う。慢性腰痛で腰椎の伸展を何年もしたことがない人が、伸展運動をすることによって長年の腰痛を解消してしまったというエピソードは枚挙にいとまがない。そのために、マッケンジーと言えば伸展運動といったイメージが先行した面もあるが、実際のマッケンジーの手法の根底には、丁寧な評価に基づいた運動療法の処方がある。

実はマッケンジー氏が伸展運動の効果を発見したのは偶然からだった。患者がたまたまマッケンジー氏の指示を取り違えて、腹臥伸展位で休んでしまい、そこから起きあがってみたら、腰痛が改善していたのだ。マッケンジー氏は1954年に起こったこの偶発的な出来事の理由を熟考し、椎間板の病理モデルを確立した。そして多くの患者で検証し、伸展運動と屈曲運動の適応の診断方法を確立したのだった。

マッケンジー氏は、家族を大切にし、セーリングとガーデニングが趣味だったという。最近まで活動的で、アメリカのラジオ番組にも出演し、腰痛のエクササイズに関するリスナーからの質問に答えていた。患者が主体的に治すということを最も重視し、セラピストは患者のサポートに全力を尽くすべきとの信念を持っていた。そして自分の開発した手法にゆらぎのない自信を持ち「人体解剖学が変わらない限り、MDTは1000年続くだろう」と語っていた。


WFC世界大会、アフリカで初めて開催

4月8日から13日までの6日間にわたり、世界カイロプラクティック連合(WFC)の第12回世界大会が南アフリカのダーバンで開かれた。主催はホスト国の南アフリカ・カイロ協会(CASA)で、42カ国から750人以上が参加する大きなイベントとなった。アフリカでカイロの国際学術大会が開かれるのが初めてだったことや、1988年に設立されたWFCにとっての25周年の年であることなどから、様々な祝賀行事も開催され、会場は大きな熱気に包まれた。

これまでアフリカ地域を代表するカイロの地域統括組織がなかったが、今回のWFC世界大会を期に、13カ国の代表からなる地域組織、アフリカ・カイロ連合(ACF)が結成された。この13カ国は、ボツワナ、コンゴ、エチオピア、ガーナ、ケニア、リベリア、モーリシャス、モザンビーク、ナミビア、ナイジェリア、南アメリカ、ウガンダ、ジンパブエで、WFCへの加盟のない国の代表も含まれている。初めての会合が来年ケニアで開かれる予定である。

WFCの25周年記念で出版された『The Global Advance of Chiropractic(世界のカイロプラクティックの発展)』の祝賀イベントもあった。著者はリード・フィリップ・ロサンゼルス・カイロ大学(現・南カリフォルニア健康科学大学)元学長で、これまでのWFCの活動を中心に、カイロが世界に広がっていった歴史がまとめられた本である。

最優秀の学術論文賞は、カナディアン・メモリアル・カイロ大学関連の研究チームに贈られた。国際的にカイロ専門職の発展に寄与したとして、フットレベラーズ社長のケント・グリーンウォルト氏、CMCC学長のジーン・モスDC、元イギリス・カイロ協会会長でWFC会長も務めたアンソニー・メトカーフDCの3人に栄誉賞が贈られた。

次回のWFC世界大会は15年にギリシャのアテネでの開催が決まっている。その次17年の開催は、アジア太平洋地域での開催を予定しており、候補国を募集中である。


カイロプラクター VS 理学療法士
カリフォルニアで法案合戦

カルフォルニアで最近、カイロプラクターと理学療法士の職権をめぐる2つの法案が提出された。もし可決されれば、この二つの職業の職権が変わり、開業者の経営に大きな影響が出るだろう。

一つは、カリフォルニア・カイロプラクティック協会(CCA)が支持し、イー上院議員が提出したSB381。「カイロプラクター、医師/外科医、オステオパシー医/外科医の免許保持者以外の健康ケア従事者の関節マニピュレーション/アジャストメントを禁止する」という内容で、CCAはカイロプラクターに積極的に法案を支持するようにホームページなどで呼びかけた。一方、理学療法士はこの法案に激しく反対する意見を次々に発表した。

4月15日に1回目の上院公聴会が行われたが、法案支持は立案したイー議員だけで、他の議員は反対という結果となり、それ以降の審議はあっけなく中断された。

もう一つは、AB1000で、カリフォルニアの患者が直接理学療法士の治療を受けられるようにするというものだ。現在は、医師などの紹介があって初めて患者は理学療法を受けられる制度になっている。この法案は、カリフォルニア理学療法士協会の強い支持を受けて2月に下院に提出された。その後審議を重ね、5月末の段階で、上院に送られた。CCAはこの法案に反対するようカイロプラクターに呼びかけている。

AB1000がこのまま可決されると、理学療法士はカイロプラクターと同じように、医師などからの指示なしに診断治療を行うことができるようになるためカイロプラクターにとってはより強力なライバルとなる。理学療法士が医師の指示なしに患者を診ることのできる州はすでにいくつもあるが、最も人口の多いカリフォルニア州の州法がどう変更されるかは、全米のみならず全世界に影響するだろう。

CCAの政治活動は、カイロの独自性と職権を守ることが公共の利益につながることを示さなくてはならない。一般の人々からの支持を失わすに業界保護が図るために、CCAには慎重な対応が求められる。


4月12日、13日の2日間、江崎器械主催で「腰痛への新しいアプローチ」と題して、ゲリー・ジェイコブDCのセミナーが東京で開かれた。このセミナーは昨年12月の大阪に引き続き2回目。ジェイコブDCは、何度も日本でセミナーを行ったことがあるが、最近は全く行っていなかった。今春は江崎器械創業者の江崎健三氏の追悼も兼ねて来日セミナーを行った。
日本が大好きというジェイコブDCは、今後も継続してセミナーを開催したい考えだ。来日を機会に、日本の印象やセミナーの内容などを伺った。

――約10年ぶりに訪れた日本の印象はいかがでしたか?

とにかく私は日本が大好きなんです。だからいつだって好感度は高いです。10年前よりも喫煙と飲酒をする人が少なくなったようですね。セミナーに関しては、現在も過去も質のよい受講者に恵まれていると思います。

――もし時間に余裕があったら、日本で何をしたいですか。

セミナーで教える前に少し時間を取って京都で過ごしました。京都がとても好きです。特に桜の季節の哲学の道、禅寺と庭園、特に竜安寺は心引かれる場所です。今度機会があったら日本の田舎をもっと見てみたいと思っています。

――先生のセミナーは、どんな臨床家に向いているのでしょうか。

私のセミナーは、臨床理論とエビデンスが示す効果に基づいた批判的思考を奨励しています。エビデンスに基づく評価と治療を大切に考えています。治療には徒手療法以外に、教育、運動療法も含んでおり、マッケンジー、バトラー、ラスレット、マリガンなどが開発したテクニックを紹介します。

痛みの起源が、姿勢なのか、短縮組織なのか、または椎間板、仙腸関節なのかを合理的に鑑別し、それから適切な治療ができることを到達目的としています。また、患者本人の自助努力を最大限に生かすことに重点を置いています。

内容は、柔道整復、カイロプラクティック、鍼灸、理学療法など、いろいろなバックグラウンドの治療家に役立つと思います。つまり職種が何であるかよりも、治療家個人の考え方により、セミナーが有意義かどうかが決まるでしょう。

――日本では「カイロ・セミナーの受講資格」ということがとかく問題視されます。先生は何かご意見がありますか。

私のセミナーでは認定証を出しません。臨床理論を批判的に思考する能力を高めることが、セミナーの唯一の目的です。

認定証を発行するカイロ・セミナーは多いですが、マッサージ的な技術や器具を多用しているものが多く、私の意見ではカイロの伝統を踏まえたものではありません。名称のあるテクニックで言えば「カイロ・バイオフィジックス」のようなレントゲン判断による脊椎マニピュレーションを行うものは、WFCが認める学校を卒業したカイロプラクター以外は対象にすべきではないと思います。

私のセミナーではマニピュレーションは教えません。実際の臨床では、大多数の症例は、教育と徒手モービリゼーションだけで対応できます。

――日本の将来の参加者に何かコメントがあればお願いします。

日本の伝統に、簡素化の美意識というものがあります。これは私の筋骨格系の評価・診断につながります。テクニックはシンプルで、患者の状況に心から留意するというものです。しかし私のセミナーの具体的な内容は、実技中心で楽しみながら練習できるように考えています。実際の臨床にすぐに役立つ実技が中心です。私のウェブサイトには日本語の資料もありますので、まずそれを読んで理解を深めてもらえればと思います。

 

 

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