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Beyond Manipulation <第5回>可動性亢進による筋の過緊張と筋連鎖2012.06.26

カイロジャーナル74号 (2012.6.26発行)より

臨床で、筋骨格系の問題を治療する場合、カイロプラクターであれば、原因を脊柱や四肢の関節に見出そうとする。動きや体位で症状が出現、悪化する場合、症状を起こしている部位の関節の可動性テストにより可動性が亢進している状態では、最大可動域からスラストを行う矯正は不適切になる。このため、矯正による治療は、この部位の可動性亢進状態を軽減するために隣接する部位の治療になる。つまり症状のない部位に矯正やモイビリゼーションを加えるということになる。

例えば、下部腰椎に体幹伸展時に症状が出現、悪化し、伸展可動域が亢進している場合、体幹伸展にかかわる椎骨あるいは、四肢の関節の伸展可動性制限(フィクセーション)の矯正やモビリゼーションが必要になる。このような方法は、伸展時に起こる痛みや痺れなどの症状にも使用できる。

可動性亢進関節は、関節そのものに常に痛みが起こるとは限らない。可動性亢進関節、特に慢性的に不安定な関節では、その関節の安定性にかかわる靭帯などの結合組織は、正常な組織の長さよりも伸長されている状態になるが、常に症状があるわけではない。この関節の過剰に伸長されてしまっている結合組織に、さらに持続的な伸長が加わる場合、または振動などが加わる場合、症状が発生することになる。これはフィクセーションに対する治療と同じことが、可動性亢進関節に加わることと同じである。

通常、我々は、フィクセーションを起こす結合組織の短縮に対しては、スラストやトラクション(牽引)による短縮組織の伸長、モビリゼーションによる組織の揺動(振動)を加えることで結合組織短縮の改善、可動性制限の改善を試みる。

不適切な体位による可動性亢進関節周囲の結合組織の伸長、さらに乗り物などによる振動が加わる場合、姿勢や外部からの力によりフィクセーションに対する処置である結合組織の硬縮の伸長が起こることになり、可動性亢進関節がより可動性亢進状態になり、鈍い痛みや重だるさなどを起こすことになる。これは、長時間の座位や自動車の運転などによる腰痛の出現や悪化として臨床でよく見られる。

可動性亢進関節の治療は、可動性亢進の可動域で同時に作用する関節のフィクセーションの矯正やモビリゼーションであるが、この治療ではその効果が十分ではない場合、あるいは可動性亢進がフィクセーションの代償作用ではない場合、可動性亢進関節を固定しなければならない。

固定は、サポートでも可能なケースもある。その他、マッスルガードといわれる作用がある。可動性亢進関節の周囲の筋は、不安定な関節のために、通常よりも、過剰に伸長、短縮が繰り返し加わることになる。このため筋紡錘は、通常よりも過敏に反応しなければならない。これは、γ運動神経により筋紡錘の錘内線維の緊張度を増し、わずかな伸長、短縮による調節を可能にしている状態である。結果的に、関節周囲の筋の緊張度は増加して、過緊張になる。筋の緊張度を増すことで、結合組織の伸長により安定性を失った関節を安定させることができる。

このような状態があるケースでは、関節の安定性を得るための筋の過緊張を、過緊張筋の弛緩だけを目的とする治療を加えることで、症状は悪化、あるいは出現することになる。このとき大切なことは、モーション・パルペーションにより、結合組織短縮による可動性制限と筋の過緊張による可動性制限を鑑別することである。

可動性亢進関節の安定化を図るための関節周囲の筋の緊張度は、これだけで決定されるわけではない。関節の可動性亢進による筋線維、筋紡錘に繰り返す過剰な伸長による緊張度の変化以外に、さらに体全体の筋の間で影響しあう筋の緊張度である。

この全身の筋の間で調節される筋の緊張度の変化は、重力に対して体位を保持することをベースとし、さらに、これに筋の酷使など、さまざまな原因による過緊張などが加わることになる。

可動性亢進関節による筋の過緊張が適切に関節の動きに適応して、適切に筋の緊張や弛緩のコントロールができない場合、可動性亢進関節による症状を悪化させる可能性がある。

これを改善するためには、必要(可動性亢進関節の安定化のための緊張)以外での筋への負荷(筋、筋紡錘への伸長)を軽減することである。

このためには、全身の連動する筋の連鎖を理解する必要がある。筋連鎖には、抗重力筋、姿勢筋の連鎖、相動筋の連鎖などがある。

例えば、むち打ち症で中部頚椎の可動性亢進がある場合、中部頚椎の筋の緊張は、不安定な関節を安定化させるものであって、必要な過緊張である。しかし、この頚部の筋には、筋連鎖により姿勢筋や相動筋からの不必要な張力が加わる場合がある。この不必要な張力は、中部頚椎の安定性に必要以上の筋の緊張を起こすことになる。

この筋連鎖による他の部位からの張力が起こす過緊張は、前述したむち打ちによる可動性亢進だけではなく、頚部であれば可動域中の痛みを軽減することも適用できる。必要以上の筋の緊張は、例えば頚部椎間関節の炎症がある場合、頚部可動域を制限し、頚部の動きによる炎症部位への刺激を大きくすることになる。

重要なことは、関節の可動性をしっかりと検査し、必要である筋の緊張を理解することであり、可能な限り他の部位からの影響による、さらなる過緊張を防ぐことである。

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