痛み学NOTE<第25回>「神経因性疼痛の機序と舞台」 | カイロプラクティックジャーナル

  「神経因性疼痛の機序と舞台」

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痛み学NOTE <第25回>「神経因性疼痛の機序と舞台」2011.10.28

カイロジャーナル72号 (2011.10.28発行)より

ところが、この悪循環説だけでは理解できない痛みの存在が明らかになる。それが神経因性疼痛とされる難治性の痛みである。神経因性疼痛は悪循環説にみる痛みの発生機序と全く違っている。神経自身が痛みのジェネレーターになるのだ。舞台は、脊髄における神経細胞である。

In vitro神経根モデル

神経因性疼痛の機序(『細胞工房別冊 脳を知る』113頁より)

熊澤孝朗先生の論文「痛みは歪む」に、分かりやすい図が示されていたので引用した(図)。図には、痛覚神経終末が脊髄の神経細胞に接続される舞台での活動が示されている。脊髄の神経細胞には、いくつかの受容体がある。重要なのは「NMDA受容体」で、このゲートが開いてしまうと中枢での痛み感作が作動するのだが、通常ではこのゲートは閉ざされている。マグネシウム(Mg)で、ゲートに蓋がされているのである。

神経終末端ではグルタミン酸とサブスタンスPが蓄えられていて、特にグルタミン酸は脊髄における痛みの伝達物質として主導的役割を演じている。補佐役はサブスタンスPである。グルタミン酸の役割が明らかになった背景には、毒ササコを食べた婦人にアロデニア症状が出たというエピソードからだった。毒性物質はアクロメリン酸で、グルタミン酸を分子構造内に持っており、これが脊髄の抑制系介在ニューロンを選択的に破壊するということが分かったのである。

さて、強い痛みが持続的に伝達されるようになると、グルタミン酸は神経終末から多量に放出されてくる。ところが、グルタミン酸を受容するNMDA受容体は、Mgによって閉ざされている。そこで別のイオンチャンネルnon-NMDA受容体のゲートになだれ込み、脱分極が活発になる。

この脱分極の活発化は、Mgの蓋を外す時の第一の力となる。こうした状況が続くと、この働きに補助的に働くのが神経終末に蓄えられているサブスタンスPである。この神経ペプチドの受容体はNK1受容体で、サブスタンスPが入り込むことで細胞内変化が起きてPKC(たんぱく質キナーゼC)が作られる。このPKCがNMDA受容体の蓋を外す第二の力となる。

こうしてNMDA受容体のMgの蓋が開くと、グルタミン酸がNMDA受容体になだれ込み、同時にカルシウムイオンも流れ込んで興奮し、痛覚物質であるプロスタグランジンと一酸化窒素(NO)が作られることになる。

プロスタグランジンは脂溶性で、NOは気体であるため、どちらも細胞膜を易々と通過し、痛みは中枢性の感作となって伝達されて行く。神経因性疼痛という難治性の痛みは、侵害受容性疼痛とその機序が全く異なる頑固で鋭敏な痛み症状となる。


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