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Beyond Manipulation <第1回> フィクセーション モデル2011.02.25

カイロジャーナル70号 (2011.2.25発行)より

フィクセーションとは正常な可動域を欠く椎骨または骨盤とでもいうのであろうか?我々カイロプラクターはその技術の習得に勢力を注ぐ。しかし、我々は本当にフィクセーションを理解しているのだろうか?カイロプラクティックでは、科学、技術を重視する。技術ではモーションパルペーションの習得であるが、科学の面でフィクセーションの説明があまりはっきりしていないような気がするのは、私だけであろうか。そこで、私なりにフィクセーションの科学を提唱したいと思う。

正常な可動域を制限するものは何であろうか?
  • 筋の硬縮?
  • 関節の硬縮?
  • それとも滑液の硬化?

簡単に考えると3つの可能性が考えられる。

筋の硬化は、アジャストメント対象にはならない。なぜなら、筋は筋紡錘、ゴルジ腱器官などの神経受容器によりコントロールされている。恐らく、これらの異常により硬化(過緊張)していると考えられる。このような状態で、フィクセーションを改善するようなスラストを加える場合、その硬縮した筋が伸ばされるような方向に力が加わることになる。この操作のため硬縮した筋はストレッチされることになる。筋に関して圧倒的に理解が進んでいるアプライド キネシオロジーでは、筋のストレッチは筋の硬縮を助長することはあっても、弛緩させることはないという。これも理解できる。筋をストレッチすることは、筋紡錘、ゴルジ腱器官をストレッチすることになる。筋紡錘がストレッチされることにより起こる反応は、筋の収縮である。反対にゴルジ腱器官をストレッチすることにより起こるのは筋の抑制、弛緩である。しかし、ゴルジ腱器官を興奮させて、その抑制作用が起こるのは、筋組織の損傷が起こるほどの過剰なストレッチである。恐らく、このようなストレッチを加えるためには、関節の靭帯損傷が起こる可能性は非常に大きいであろう。ストレッチがよいとされる理由は、私には理解できない。唯一、効果的であると考えられるのは、筋膜の短縮に対してである。結合組織である筋膜は、ストレッチにより伸張される可能性がある。これはストレッチの方法によってもその効果は異なると思われる。直接法、間接法などどちらが効果的なのか、などの論争はよく耳にするが、この筋の硬縮による可動域制限であれば、間接法の有効性も理解できる。後に述べる靭帯や滑液によるモデルの場合、間接法の有効性は考え難い。以上のことから、フィクセーションが筋の硬縮によるものとは考えにくい。少なくとも、スラストを必要とするフィクセーションとしてあてはまることはないであろう。

次に、靭帯の硬縮である。靭帯の硬縮はアプレジャーの頭蓋テクニックでいわれているモデルである。結合組織の短縮で説明できるであろう。結合組織、硬膜や靭帯など、ほぼその組成は似ている。基本的に、線維性組織であるコラーゲンとこれらの間、間質を満たすムコ多糖類である。ムコ多糖類はゲル状の液体であり、ある程度の粘性を持つ。結合組織である靭帯の硬縮はこのムコ多糖類の粘性が増加した状態である。これは、結合組織に圧縮の力が加わり、ムコ多糖類がその濃度を上昇させた状態、水分が減少した状態である。この粘度が増加した液体がコラーゲン組織の間の間質を埋める場合、コラーゲン組織の弾力性を制限することになる。これは、関節包を構成する靭帯の硬縮を誘発するものである。セミナーでフィクセーションはどうしてできるのですか?という質問を受けることがある。その答えの一つは、靭帯、結合組織の圧縮である。コラーゲンの圧縮は単に線維組織を圧縮している状態で伸ばそうと思えば伸びる。これは、ばねを想定していただければよいと思う。しかし、圧縮されたムコ多糖類は周囲の組織からの水分の流入を待たなければならない。これが縮んだばねの間を縫ってムコ多糖類に届くのは、短時間の間には難しいということになる。このタイプのフィクセーションでは、スラストやストレッチによりそのムコ多糖類の粘度の低下を誘発することが可能であると考えられる。したがって、結合組織、靭帯で構成されている関節の硬縮により起こる可動域に対して、スラスト、ストレッチは有効であると考えられる。ちなみに、椎骨では、靭帯は関節包だけではない。前縦靱帯、後縦靭帯、黄色靭帯、横突間靭帯、棘間靭帯なども同様である。

結合組織(コラーゲンとムコ多糖類)。左が正常、右が圧縮

結合組織(コラーゲンとムコ多糖類)。左が正常、右が圧縮

最後に滑液による可動性制限である。前述した靭帯の硬縮と併発するケースが多いと考えられるが、仮に、靭帯の硬縮がないとすると、可動域の制限を起こすものは、閉ざされた関節包内に含まれる滑液の粘度の上昇である。この原因も圧縮である。関節が圧縮された状態が長時間続くと、水分は、関節包そのものやその周囲の脈管を含む組織に分散され、液体はその粘性を増し関節包を伸長するような動きを制限することになる。これは、スラストのときに、関節包を伸長することで陰圧になり、矯正音を起こす原因と考えられる。

関節包、靭帯、滑液の硬化によりフィクセーション(矯正対象となる)が起こるということになるが、その多くの原因は、圧縮である。これは重力によるものでもあるが、一つの部位に過剰な圧縮が加わることによるものである。これは不良姿勢による脊柱の一部への加重の増加や脊柱周囲の筋の硬縮により圧縮力が加わることによっても起こる。

脊柱の彎曲増加により圧縮を受ける部位

脊柱の彎曲増加により圧縮を受ける部位

これが理解できれば、フィクセーションが起こる可能性が高い部位を推測する事は容易である。圧縮されているところである。例えば胸椎の後弯が増加している場合、脊柱のみで考えれば、圧縮されている部位は、脊椎後部の組織ではなく、前部、椎体周囲の組織である。頚椎、腰椎で、前弯が増加している場合では、脊椎後部の組織、関節包や横突間靭帯、棘間靭帯、黄色靭帯、関節包などの硬縮が起こる可能性が高い。逆に伸長されている部位は、これらの逆で、胸椎では、脊椎の後部、頚椎、腰椎では前部である。

よく見る頚椎のスラストで、この理論と反するものがある。過伸展している頚椎に対して進展した状態でスラストを加える事は、伸長された靭帯を伸ばすことになる。過伸展している頚椎は、屈曲位でスラストすることにより、後部の短縮した組織の柔軟性を回復することにつながると考えられる。モーションパルペーションにおいても、屈曲位でモーションパルペーションを行う場合、脊椎後部の組織の硬縮による制限、伸展位では前部ということになる。

このような理論を考えることで、今までのモーションパルペーションが、また新たな有意義な検査法になると思う。簡単な組織学と我々が日常行っているマニピュレーションを結びつける。それは有意義なことであると確信している。

さて、次の段階はフィクセーションと傷害部位との関係である。フィクセーションがある部位が痛みを起こすという考え方は大間違いである。したがって、痛みのある部位に靭帯組織を伸ばすようなスラストを加える事はない。

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