「なぜ、クレニオパシーや末梢刺激は、脳内鎮痛系を賦活させるのか」 | カイロプラクティックジャーナル

  「なぜ、クレニオパシーや末梢刺激は、脳内鎮痛系を賦活させるのか」

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痛み学NOTE <第15回>「なぜ、クレニオパシーや末梢刺激は、脳内鎮痛系を賦活させるのか」2010.11.03

カイロジャーナル69号 (2010.11.3発行)より

オピオイドペプチド(リガンド)が生体のどこに多く存在するかを究明できれば、その部位が鎮痛経路における内因性オピオイドによる鎮痛系の成分ということになる。だが内因性オピオイドペプチドの伝達は、体液中の化学受容器として働く「脳-血液関門」によってバリアが張られている。だから体内に注入しても脳には届かない。

このことは脳内にさらなる作用部位が存在する証拠となった。やがて中枢神経系内にβエンドルフィンや、エンケファリンを産生するニューロンがわかってきた。このニューロンが興奮すると、軸索突起の終末部から脳内や脊髄内に、内因性オピオイドペプチドが放出されるような仕組みになっている。

さて、その代表的な内因性オピオイドペプチドであるβエンドルフィンをつくるニューロンは視床下部などにあり、視床下部からは大脳辺縁系や脳幹のいろいろな部位に神経線維を伸ばしている。

視床下部弓状核のニューロンから中脳中心灰白質に送られる神経線維が刺激されると、βエンドルフィンが遊離されて下行性疼痛抑制系が賦活する。

下行性痛覚抑制系は3つの部分から成り立っている。

1つは中脳(中心灰白質)で、次が延髄(大縫線核)、そして3つ目が脊髄後角である。中脳のシルビウス水道周囲、橋上部の水道周囲灰白質、脳室周囲、第3、4脳室隣接部からの信号を、大縫線核(橋下部と延髄上部にある正中核)と網様核(延髄下部にある傍巨大細胞)に送るのである。

さらに、これらの核から脊髄の後側索を下行して脊髄後角に位置する痛覚抑制核群に伝えられる。また、青班核からはノルアドレナリンが脊髄の前側索を下行し、この2つのルートによって痛み信号が上行性に伝達される前に遮断する機序が働くことになる。

この下行性疼痛抑制系の活動を中脳で持続的に抑制しているのがγアミノ酪酸(GABA:抑制系のアミノ酸)で、この作動性ニューロンをβエンドルフィンが抑制する。エンケファリンは大脳皮質から脊髄まで、中枢神経系内のいろいろな部位に分布しているとされるが、特に中脳中心灰白質のニューロン細胞体はエンケファリンを産生して抑制系に積極的に関与している。

つまり抑制系を抑制しているGABAを、βエンドルフィンやエンケファリンが抑制しているわけで、この「脱抑制」によって下行性疼痛抑制系が賦活される。

中心灰白質を出た下行性疼痛抑制系の神経線維の一部が、延髄の大縫線核や網様核で放出するのは、興奮作用を持つグルタミン酸やアスパラギン酸などのアミノ酸(*)である。大縫線核にはセロトニンを産生するニューロンがあり、興奮性作用を持つアミノ酸がこの部位のニューロン細胞体を刺激してセロトニンを産生させる。この神経線維の終末部が、脊髄後角ニューロンと接続してセロトニン経路の鎮痛作用を起こすのである。

こうしてみると、この痛覚抑制系は痛覚系が作動すると機能するシステムである。この原理を応用して、鍼灸を含めた徒手療法では末梢刺激を使って痛覚系のネガティブ・フィードバック・メカニズムを利用する手法をとっていることになる。

また、慢性痛患者の脳脊髄液(CSF)中にはβエンドルフィンが減少しているという報告もあり、鎮痛経路の成分からみてもオステオパスが行うクレニオパシーは鎮痛治療としても意義深いものがあるのかもしれない。

<注釈>

(*)アミノ酸は身体に最も多く存在する神経伝達物質の1つの類で、神経細胞間の素早い点対点の伝達に関わっている。中枢神経系のすべてのシナプスの90%ほどの伝達に関わっているといわれている。なかでもグリシン、グルタミン酸、アスパラギン酸、γアミノ酪酸(GABA)などが重要で、グルタミン酸は脳内で最も典型的な興奮性伝達物質であり、GABAは最も多い抑制性の神経伝達物質である。アミノ酸の以外の伝達物質には、モノアミン類や神経ペプチドなどがある。神経ペプチドは、ポリモーダル受容器の作用を考える上で欠かせない物質である。


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