痛み学NOTE<第14回>「なぜ、身体にはモルヒネを受け取る仕組みがあるのだろう」 | カイロプラクティックジャーナル

  <第14回>「なぜ、身体にはモルヒネを受け取る仕組みがあるのだろう」

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痛み学NOTE <第14回>「なぜ、身体にはモルヒネを受け取る仕組みがあるのだろう」2010.11.03

カイロジャーナル69号 (2010.11.3発行)より

ヒトを含めた脊椎動物には、アヘン類の受容体(オピエート受容体)が備わっている。オピエートとは、自然界にある麻薬物質でケシ坊主を傷つけたときに出る乳液からつくられた「アヘン」や、それを化学的に合成したアルカロイドのことである。アルカロイドはモルヒネと名づけられているが、この薬物に対して鎮痛作用などの奏功を示すということは、身体にその受容体があるからにほかならない。

そもそも、脊椎動物の身体にオピエート受容体がなぜ存在しているのだろう? 麻薬が体内に侵入してくることを待ち望んでいる、というわけでもあるまい。ならば、体内でアヘン様物質がつくられているとしか考えられないことになる。

アヘンやモルヒネは、人類が鎮痛物質として紀元前から使用してきた歴史がある。そのためにアヘン戦争の引き金にもなったくらいで、依存性と副作用も強く、今でも違法薬物として周知の社会問題にもなっている。だが、強力な薬理作用を持つモルヒネは医療の分野では欠かせない薬物である。にもかかわらず、その作用機序については長い間不明のままであった。

なにしろ、オピエート受容体が発見されたのは1973年(昭和48年)のことで、つい近年である。発見したのはキャンデス・B・パート女史である。彼女は自らの落馬事故でモルヒネを使うことになり、その影響を知りたくて薬学の本を読みあさったという。そして一念発起してジョンズホプキンス大学医学部に入り大学院に進み、ついにオピエート受容体を発見したのである。

学ぶことにも、明確な目的とそのモチベーションを保つことが重要なのだと感動するエピソードであるが、この発見によってヒトの鎮痛の基本的な仕組みが明かされていくことになった。

この発見に先立つ1969年には、脳の特定領域を電気刺激すると鎮痛がもたらされる刺激誘発性鎮痛(SPA)が見つかっている。生体内には存在しないモルヒネと特異的に結合する受容体があるということは、生体がこの受容体と特異的に結合する活性物質を作り出しているからで、受容体発見から12年後の1975年(昭和50年)には、脳内麻薬である内因性オピオイドペプチド(*)が見つかった。

<注釈>

(*)ペプチドとは動物の体内でつくられたホルモンの働きをする物質で、オピオイドペプチドは3種類の巨大蛋白分子(プロオピオメラノコルチン、プロエンケファリン、プロダイノルフィン)を消化する過程でつくられる分解産物である。こうしてつくられた主な内因性モルヒネは、最も強力なβエンドルフィン、少量のダイノルフィン、弱い作用のエンケファリン類(メチオニン・エンケファリン、ロイシン・エンケ ファリン)などである。βエンドルフィンは、モルヒネよりも強力な鎮痛作用があると言われている。


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