<第4回>「TMSも痛風も「侵害受容性疼痛」である」カイロプラクティックジャーナル

  <第4回>「TMSも痛風も「侵害受容性疼痛」である」

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痛み学NOTE <第4回>「TMSも痛風も「侵害受容性疼痛」である」2009.06.29

カイロジャーナル65号 (2009.6.29発行)より

実際のところ、痛みを生理学の視点から捉えることに意識が向くようになったきっかけは、J.E.Sarno,M.D.の「TMS理論:Tension Myositis Syndrome(緊張性筋炎症候群)」である。10年来続いていた持病の腰痛が悪化して寝込んだ時に、Sarnoの著書を読んだ。腰痛を心理的・生理学的視点から捉えた内容だった。

Sarnoは「Mind Over Back Pain:背腰痛を支配する心」というTMSに関する著書を1984年に発表し、1991年には「Healing Back Pain:The Mind-Body Connection」を発刊してベストセラーになった。それだけでなく、アメリカでは30万人以上の腰痛患者が、指一本触れることなくTMS理論を受け入れることで治った、と話題にもなった。

CNN最高の人気を誇るアメリカのライブ番組でもTMSを取り上げていた。名物キャスターのラリー・キングが慢性腰痛をテーマに特集したのである。彼は、実際に腰痛に苦しんだ人達とのインタビューを通してTMS理論を紹介していた。私もTMS理論をカイロ業界などの雑誌に書き、講演等で紹介したこともあった。

こうした心身に相関する痛みの概念は決して新しいものではない。日本でも九州大学の池見酉次郎教授が「心身医学」としての領域を確立している。

TMS理論とは「心の緊張が痛みをつくる」ことを生理学的に仮説したものである。では、TMSは一体「痛みのカテゴリー」のどこに分類されるべきものなのだろうか。よもや、「心因性疼痛」とは考えてほしくない。TMSはまぎれもなく「侵害受容性疼痛」なのである。

私たちはどのようにして痛みを感じるのだろう。簡単に言えば、身体に無数に存在する痛覚受容器が機械的刺激、あるいは熱刺激、あるいは化学的刺激によって侵害されることで興奮し、その信号が脳に送られて「痛み」として認知されるということになる。これが「侵害受容性疼痛」である。

TMSの場合は交感神経系の緊張によって細動脈が収縮し、酸欠状態となって痛み物質を誘発する。それが受容器を侵害して圧痛点も作られる。したがって、TMSは侵害受容性疼痛であり、徒手療法にもよく反応するのである。そんなわけで、痛みには心理・社会的側面からのフォローが不可欠とされている。

「心身症」とされる疾患にも、痛み症状を持つ疾患名が見受けられる。日本心身医学会の定義によれば、心身症とは、その発症や経過に心理・社会的要因が密接に関係するもので、器質的あるいは機能的障害が認められる病態である。

例えば、「痛風」も強い痛みを訴える整形外科領域の心身症とされている。痛風は身体の中に尿酸がたまる病気で、尿酸値の基準が最も有力な診断の手がかりであるが、尿酸は単なる暴飲暴食が誘因とは限らない。腎臓障害とそれに関連する循環器の疾患も内包していたりする。また、尿酸の排泄を抑制する作用を持つ投薬が行われていても発症する。それでも痛風が心身症とされるのは、身体的・精神的ストレスによっても尿酸が誘発されるからである。その痛みも、痛みの分類にしたがえば、尿酸が受容器を侵害したことにより発症した「侵害受容性疼痛」に他ならない。


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