<第3回>「痛みには3つのカテゴリーしかない」カイロプラクティックジャーナル

  <第3回>「痛みには3つのカテゴリーしかない」

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痛み学NOTE <第3回>「痛みには3つのカテゴリーしかない」2009.06.29

カイロジャーナル65号 (2009.6.29発行)より

痛みの定義(IASP)によれば、痛みには二面性がある。感覚的な側面と情動的な側面であるが、後者がこの痛み感覚をより複雑にしているようだ。痛みが「個人的な経験」とされる所以でもある。更に深刻なことは、痛みを「病い」としては捉えない状況が医療サイドにあることだろう。

痛み症状を持つ疾患を数えあげても随分の数になる。その一つひとつの疾患を痛み症状との関連から捉えようとすると、更に悩まされてしまう。でも、痛みそのものを分類すると、3つのカテゴリーしかない、という単純な話になる。

その3つとは、

  1. 侵害受容性疼痛
  2. 神経因性疼痛
  3. 心因性疼痛

である。なかには「癌性疼痛」を別にして4つに分類する向きもあるが、「神経因性疼痛」に含めている場合が多いようである。

では、徒手療法で扱う痛みはどれかと言えば、そのほとんど全部と言ってもいいくらい「侵害受容性疼痛」を治療していると断言してもいい。

心因性疼痛の名称は怪しい!?

胡散臭いのは「心因性疼痛」である。「心因性」という痛みの分類名称が、果たして的を得たものかどうかさえ疑わしい。痛みには両義性があると定義されているわけで、そうなると痛みには常に「心」の側面がついて回るからである。

純粋に「心」に起因する痛みの線引きは何を基準にして行われるのだろう。それすら不鮮明で、心因性という用語だけが一人歩きしているように感じられてならない。おそらく、生物医学モデルで説明のつかない痛みがあり、その病態を精神医学的疾患として理解されてきた背景があるのだろう。

精神疾患の診断基準(DSM)では、1980年に初めて痛みを「心因性疼痛障害」として精神障害のひとつに認めている。それも1987年には「身体表現性疼痛障害」と改定され、94年以降は「疼痛性障害」とされた。このことからも混迷の跡が窺える。

「心因性」を冠する疾患・症状名は多い。それも眼に見える心因性の症状である。心因性蕁麻疹、心因性嘔吐、心因性の咳、心因性の下痢なども実存する。つまり眼で見ることができる。

ところが、痛みには視覚系の原理が通用しないから厄介である。視覚系は構造主義の原理なので、親近性があるのは実存主義ということになる。つまり、実存するものとは瞬間か永遠かのどちらかという話で、そうなると痛みが実存しているかどうかは知る由もないのである。だからこそ心因性疼痛の分類は、ますます胡散臭いと思わざるを得ない。

ミステリー作家の夏樹静子氏が、自らの腰痛の闘病記を「椅子がこわい ―私の腰痛放浪記―」という本にした。現代医学でもあらゆる代替療法でも治療すべき悪いところがないとされた重度の腰痛が、心療内科医の行う森田療法で指一本触れる事なく治ったのである。このことを知れば、脳内の内的な要因で起こる「心因性」なる痛みの存在を否定することはできないようだ。それでも、どうもその呼び名だけは何とかならないものかと思う。


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