カイロプラクティックを定義する -その2-カイロプラクティックジャーナル

  カイロプラクティックを定義する -その2-

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カイロプラクティックを定義する -その2-

  

カイロジャーナル55号(2006.3.9発行)より

哲学に救われたカイロプラクター

起訴されつづけた受難の時代

DDパーマーは1906年、免許なしで医業を行ったとして起訴された。そのとき、カイロプラクティック(以下、カイロ)業と医業は別であると主張したが、陪審員の判断は有罪だった。DDは罰金を払うのを拒否し、投獄された。これがこの後70年以上も続いた医師によるカイロプラクターの起訴時代の幕開けだった。

DDの釈放後、息子のBJパーマーは、カイロプラクターを訴訟から守るための組織、ユニバーサル・カイロプラクティック協会(UCA)を創立した。UCAの最初の仕事は、パーマー・カイロプラクティック・スクールの卒業生、森久保繁太郎の弁護だった。森久保は日本人最初のカイロプラクターであり、その後の生涯を移民として米国で暮らした。

森久保は07年、免許なしで医業およびオステオパシーを行ったとして起訴された。この訴訟で被告側は、次のような説明で森久保の正当性を主張した。「カイロは医業、オステオパシーとは異なる。私たちは疾患を治療するのではない。患者の病気の原因を取り除くのである」、「カイロプラクターは、サブラクセーションを探し、それを矯正するのである」。さらにオステオパシーを学んだカイロプラクターを証言台に呼び、カイロの独自性を説明した。「カイロプラクターは、神経系にのみ興味を持っている。オステオパシーには『動脈の原理』があり、ドクター・オブ・オステオパシー(DO)は循環器にのみ焦点を当てる」。裁判の結果は、森久保無罪だった。

この後、医師によるカイロプラクターの大量起訴時代が続く。30年までのカイロプラクターの医師法違反による起訴件数は、実に3万を超えた。これらの裁判では、森久保の弁護と同じ論理が用いられ、多くのカイロプラクターが無罪となった。有罪となったカイロプラクターも多かったが、DDの教えに従い、進んで投獄され、無言で正当性を主張した。

これらのカイロの存亡をかけた裁判と関わる中で、カイロ哲学は構築され、BJとその弟子たちは、生気論を軸としたサブラクセーションの概念を強化させていった。サブラクセーションは生気生命力(イネイト・インテリジェンス)を阻害し疾患の原因となる。カイロ・アジャストメントは、生命力の阻害因子を取り除く。法廷の場で説明された「カイロ哲学」が多くのカイロプラクターを救った。森久保裁判の弁護士を務め、その後長くカイロ訴訟に携わった弁護士、トム・モリスには08年、BJからカイロ哲学者の称号(PhC)が授与された。

検証可能性なくとも学問か?

初期のカイロにおいて、BJ哲学は、カイロ業の存続、発展に寄与したが、このような哲学あるいは信条が、カイロの科学の発展を阻害するのではないか、と考えるカイロプラクターが次第に増えてきた。カイロ界の外の近代哲学は、自然科学と数学を基礎とし、厳しく疑うこと、探求することが歓迎される学問だったからである。BJが発展させ、スティーブンソンによってまとめられた『カイロプラクティック・テキストブック』(1927)には、第一原則(すべての事物の顕現としての神の存在)とそこから派生する33の「カイロの原則」が述べられており、これらは、批判的思考も許さなければ、検証も不可能である。

カイロの科学についてはどうだろうか。科学的に物事を扱う際に不可欠なのが「検証」である。「カイロの原則」を仮説として扱っても検証はできない。「生命とはトーンの発現である」、「インテリジェンス、マター、フォースが生命を形づくる」。または「カイロの業務範囲は何か?」のような質問に対する回答も検証不可能である。

これに対して「脊椎マニピュレーションは腰痛を緩和させる」は検証可能である。「アジャストメントはサブラクセーションを取り除く」、「サブラクセーションは免疫系を弱化させる」も、サブラクセーションを定義し特定できれば検証可能である。

BJは、数多くのレントゲン写真を用いてサブラクセーションを探し、検証しようとした。その努力は科学的な取り組みとしてその後のカイロに影響を与えているだろう。

科学的根拠なければ発展なし

カイロは、医業からの廃絶運動に対する抵抗の歴史から、そして業界内の主義主張の対立から、学術的な真理の探求よりも政治的有用性を重視してきたかもしれない。業界の発展を考えれば、過去においてそれは成功した戦略だったかもしれない。しかし科学的または学術的な裏打ちがなければ、これからの時代のカイロの発展はないだろう。ここに紹介する北米のカイロ団体の一般人向けの説明を読むと、科学性や客観性と、伝統的信条(哲学)のバランスに、それぞれが独自のスタンスを持っていることがわかる。CCAからは、科学性がない信条は廃すという強い態度が伺える。ICAは、哲学なくしてカイロは成り立たないという立場を守っている。

哲学(信条)指向のカイロプラクターは、哲学を取り去って行けば行くほどアイデンティティーが失われるという懸念を必ず主張する。業界の発展にとって、どのような態度が最もふさわしいのだろうか。

すべてのカイロプラクターにとって喜ばしいのは、カイロの原理として挙げられている事項に、直接関連する科学的仮説が立てられ、それが実証されることだろう。そういった試みは、確実に続けられている。次回はそのような研究――サブラクセーション研究――を中心に紹介したい。

北米の専門職団体の一般人向けのカイロの説明(一部要約)

国際カイロプラクターズ協会(ICA)

カイロ業務に関する声明文

  • 科学:カイロの科学は、骨格と神経系の関係に対処し、健康の回復と維持に役割を果たす。カイロの最大の関心事は、臨床的にサブラクセーション複合体(神経的阻害の原因となる隣接する脊椎構造の構造的、生理的ダイナミクスを含有する)として知られる、脊柱の構造と機能の異常である。
  • 哲学:身体は自己治癒力を持ち、疾病や機能障害を生じる主な決定要因は、身体が内的・外的な環境要因を統合する能力がないことである。直接的または間接的に、身体の機能は神経系に制御されており、したがって健康に対するカイロ理論の中心テーマは、異常な身体機能は、脊椎セグメントまたはその他の骨格系の変位の結果としての脊髄または末梢神経に対する圧迫、引っ張り、緊張による神経伝達とその顕現の阻害(サブラクセーション)により引き起こされ得ることを前提としている。
  • 芸術:カイロ芸術は、原発的な脊椎サブラクセーション複合体の探索、特定、分析、コントロール、整復のための技術と判断に関するものである。また、カイロ・ケアの特定のアジャスト方法の禁忌条件の決定にも関わる。ICAはカイロの脊椎アジャストメントが、その特定的原理の適応であることからして、この専門職がユニークで単独のものであると位置づけている。
カナダ・カイロプラクティック協会(CCA)
  • カイロは、自然で非侵襲的なアプローチ(薬を使わない徒手的アプローチ)を行い、その仕事は患者の評価、診断、治療を含む。特に脊椎、骨盤、関節に関する機能障害とその神経系への影響を評価する。患者の理学検査と病歴聴取をすることで、鑑別診断を下し、総合的な治療プランを立てる。カイロプラクターはエクササイズ、栄養、ライフスタイルに関する指導を行う訓練も受けている。
  • カイロ・アジャストメントは最も一般的なカイロ治療である。脊椎マニピュレーションとも呼ばれ、非侵襲的で、4年間の教育の中で培った高度な技術を使った徒手治療である。痛みを軽減し、動きを回復させ、筋肉の硬さを緩和することが初期的なゴールである。
  • カイロプラクターは、子供、女性、老人、そして各患者の状態に合わせた技術を選択する。患者は症状の緩和を治療後すぐに感じることが多い。現在のところ、患者の多くは、腰痛、頸部痛など、筋骨格系の愁訴に対してカイロ治療を選択しており、研究結果からこれらの症状に対してカイロが有効であることが示されている。
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